short stories
□線香花火
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「花火やりましょーよー!!」
数日前の赤也のこの発言により、今日は部活のあと、みんなで花火をすることになった。
揃って買いに行く時間はないため、それぞれが好きな花火を持ち寄ることに。
「じゃじゃーん!見てください!コレ、今年はやりの特大打ち上げ10連発〜!」
「俺はロケット花火だ!ちゃんとビンも持ってきたぜ!!天才的だろぃ!」
一番はしゃいでいるのは、赤也ブン太。
ふふふ。楽しそう。
「俺は置き花火、ねずみ花火、煙玉といろいろ持ってきたぜよ」
「うっわ!仁王先輩、それまじくっさい奴じゃないですか!なんで持ってきたんすかー!」
「プリっ」
「俺はみんなが派手な奴を持って来ると思って、普通の手持ち花火をいろいろ持ってきたよ。」
「私も幸村くん同様、一般的な手持ち花火を持ってきました。中には途中で色が変わる代物もありますよ。」
なんだかんだみんな楽しそうだな。ただ、一人を除いて…
『夜に花火など、近所迷惑もといいとこだ。俺は断じて許さん!』
直前の昨日まで一人頑なに拒んでいた真田くんだが、
『まあ、弦一郎。ここは海岸だから民家とは離れているし問題ないだろう。それに昼間の花火など、聞いたこともないぞ。』
そう蓮二になだめられて、今はちゃっかり一緒に海岸にいる。相変わらず腕組みしたままだけど。
「でも、バケツとごみ袋を用意してくれるなんて、さっすが副部長!」
そう。なんだかんだいいつつも、「や、やるからにはだなぁ、海のマナーをきちんと守らねば…!」と言って、花火じゃなくて後始末の用意をしてきてくれたのだ。
私が少し茶化し気味に褒めると、バケツに水を汲みに行くと言って姿を消した。
「弦一郎らしいな。」
「ふふ、ほんと。」
私と蓮二は顔を見合わせて笑った。
「柳先輩ー!唯厨先輩ー!早くこっち来てくださいよー!」
「行こうか。」
「うん!」
赤也に呼ばれ、私たちも海に近いところまで砂浜を下って行った。
「柳先輩は、何の花火持ってきたんすか?」
「ん、俺か?俺は、これだ」
そう言って蓮二が紙袋から出したのは、
「線香花火っすか!?」
「へえ、柳くんらしいですねぇ。」
「知り合いに手作りで線香花火を作る工房の人がいてな。試作品など、安く分けてもらった。」
「さすが参謀じゃのう。」
「へえ。確か、手作りの方が市販のものより火が持つんだよね?」
「ああ。一般的に市販のものは中国産で、機械で作られている。しかし、日本古来からの製法で作る線香花火は、撚りが強く、火薬も良質なんだ。だから火の持ちがいい。」
「あー!もういいですよ!その長ったらしい説明は!」
「そういえば、赤也。お前、ちゃんと火種は持ってきたのだろうな?」
「火種?」
「あと火をつける道具も必要だが」
「え…」
あらら。これは完全に忘れてたって感じね。
「やべ!忘れてました!そこのコンビニでライター買ってきます!!」
「大丈夫だよ、赤也。私、ちゃんと持ってきたから」
そう、私が持ってきたのは、着火マンと火種。
花火を買う時間がなくて、家にあった火種をもっていくことにしたのだ。
どうせ誰も持ってこないと思ったしね。
「さすがっす!唯厨先輩!!ありがとうございます!!」
「じゃあさっそくはじめよう!」
こうして無事に立海テニス部・ミニ花火大会が始まった。
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