short stories
□かみのこといっしょ
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「唯厨!お願いがあるんだけど」
放課後、SHRを終えて鞄に荷物を入れていると、私のもとに二人のクラスメイトが来た。
「ん、何??」
「実は、今日どうしても外せない大事な用があって、掃除当番変わってほしいんだけど……!」
「あー。今日…か…」
私は俗にいう『頼まれたら断れないタイプ』だ。
というよりむしろ、自分のできる範囲のことで他人の役に立てるなら、と常日頃から思っている。
よもや頼られたらどんな雑用でもそれなりにうれしいと思うほど。だから友達からはドМとよくからかわれるんだけどさ。
なので掃除当番や面談の日程の入れ替わりはよく頼まれる。
「お願い…!唯厨しか頼めなくて…」
目の前で一人が手を合わせて必死になってお願いしてくる。
う…私がこの言葉に弱いのを知ってて言ってるのか、それとも本当に私しか頼めない状況なのかな…
「うーんとね…私も一応用事があるんだけど……」
「そこを何とか…!」
「ちょっと、待ってね…」
そうなのだ…生憎今日は、切原くんに部活を見に行くと約束してしまったんだよね。
でも、テニス部の練習は毎日あるみたいだし、話したら、もしかしたら今日でなくてもよくなるかもしれないしね…
そうだ!真田に相談してみよう。そしてよければ事情を切原くんに伝えてもらえないかな?
そう思って真田の席の方を見ても、真田はすでに席にはいなかった。連絡を取ろうとして携帯を出したけど、
そういえば私、まだ真田のアドレス知らないっけ!と気が付き、アドレス帳から『真田』の文字を探すことを断念する。
私が何かしら手を打とうとしているのに気が付いたのか、クラスメイトは懇願するようにじっと私の方を見つめている。
どうしたものか…と悩んでいると、後頭部の方から、いきなり低く鋭い声が聞こえた。
「泌香、帰り支度は済んだのか?」
振り向くと、私のすぐ後ろに、すでに教室にはいないと思っていた真田の姿があった。
なんだ、よかった。まだいたのか!
「真田!あ、うん終わった。でも、今ね、
「ならば、行くぞ」
真田は、今のこの状況を説明しようとする私の言葉を遮ってそう言うと、踵を返してドアの方へと行ってしまった。
「え、ちょっと、真田!?」
「早く来い、置いていくぞ」
って、もう教室出てるし!?
既に置いていきかけている人が何言ってんだ…!
と心の中で突っ込みつつ、自分の荷物を持ってガタガタと椅子をしまう。
「力になれなくてごめん!今日はそういうことだから…じゃ!」
本当において行かれると焦りつつ、超真剣な顔でクラスメイトたちにそういえば、
突然の真田の登場と、私が断ったことに驚いたのか、その子は「…うん」と小さくつぶやくだけで、呆然としていた。
そんな二人を横目に、急いで机を離れ教室を出た。
「そういうこと…って…?」
「唯厨と…真田くん……が?」
「そういえば、最近よく一緒にいるとこ見かけるけど…」
まさか…ねぇ…
と二人は顔を見合わせて、怪訝そうな顔つきをして諦めていった。
そんな一部始終を見て、快く思っていない人物がいるとは、このときはまだ誰も気が付かなかった。
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