その他 読切
□死神〜その花嫁〜
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会が中盤に差し掛かった頃。アルルの耳に口を寄せ、囁くようにアーサーが言った。
「アルル。今日の夜、あの泉で待ってるから」
「えっ」
アーサーはこれまで、自分から何かを言い出したことなどない。
ひそかに好意を寄せていたアルルは、不思議に思いながらもその口元を綻ばせた。
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一人の男が夕闇に紛れ、森に足を踏み入れた。
うっそうとした木々の間に寒気立つほどの冷気が立ち込める。枝葉が不安げにざわざわと揺れ、悲鳴にも似たもがり笛が吹き抜けた。
『ようやく、だな』
その顔に表情はない。声にも抑揚がない。そんな男が歩く様は、ひどく異様な光景だった。
『ようやく俺の花嫁が見つかった・・・逃がしはしない』
口角が上がり三日月を象る。ぽっかりと空いた口――見開いた目を除けば、男は笑っているように見えた。