その他 読切
□愛と絆はイコールで
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無意識に死を恐れる女性。その気遣いと精神的な強さに、主人公は心を打たれる。
天衣が読み上げたのは、女性が主人公に心境を語る場面だった。
「じゃあ滝本さん。この時の“私”の気持ちは、どんな感じだと思う?」
彼女が結果的にどうなるのかは予想がつく。
当時、結核は不治の病だった。専用の療養所に入るくらいなのだから、そう長くは生きられないだろう。
「・・・多分悲しかったんだと思います。ほら、“私”は彼女の気持ち、わかってあげてなかったでしょ?」
「そっか。滝本さんはこういう男、嫌い?」
「うーん・・・っていうかヨッシー、それは生徒に聞くことじゃないでしょ」
確かに、と智史が笑った。教室の空気が和らいでいく。
愛里が言いたいことは何となく分かる。が、そんな細かい機微が、天然の智史に伝わるわけがない。
何が面白いのか、愛里は天衣と智史を見比べてにこにこと笑っていた。
「愛里、あんまり勝手なこと言わ」
「ふふ。マイマイ、ヨッシー動揺してるよ?もしかしたらマイマイのこと」
「うっさい。勝手に他人の感情読むのが、あんたの悪いとこ」
天衣はぐったりと机に突っ伏した。