姫兎の狩人日記

□ここって一体どこなんでしょうか
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気が付けば私は、森の中で倒れていた。
ゆっくりと身体を起こし、周りを見回す。

全くもって見覚えのない森。
だけど、私は眉一つ動かさずに、この状況を冷静に分析していた。
特に取り乱す訳も無く、ただただ無表情で。

「私は……捨てられたのかな?」

取り合えずあり得そうで、尚且つ妥当であろう結論に至った。
こんな怪しげで真っ暗な森の中に一人で来る筈がない。
つまり、誰かに気を失っている間に連れてこられ、捨てられた。
そう考えるのが一番可能性として高い。
そして、そういう行動をする可能性が一番高いのは恐らく親だ。

しかし、その結論に至った後、私は重大な事に気が付く。

「あれ……私の親って、どんな感じの人何だっけ?」

そう、私は記憶が欠落している事に気がついたのだ。
一部と言わず、ほぼ全て。
辛うじて自分の名前、楓 姫兎と言う名前だけは覚えていた。
しかし、他の事は一切思い出せなかった。
つまり、一種の記憶喪失になってしまったらしい。

私は少しだけ悩んだが、それもあっさりやめた。
悩んでも仕方がない、そう言う結論に至ったのだ。
失ってしまったのなら仕方ない、回復するまで待つしかない。

自分に結論を出した後、私は辺りを再び見回
した。

「これからどうしよう。」

不思議と私は淡々としていた。
普通なら怖くなったり、不安になったりするものなのだが、私は記憶と共にそう言う感情も欠落してしまった様だ。
全く持って危機感が無い。
それも困ったものではあるが。

「!!」

私は背後から何かが飛んでくる気配を感じた。
咄嗟に身を屈めると、その先にあった木々に何かが突き刺さった。
振り返って飛んできた何かを確認したかったが、今は飛んできた方向に背を向ける方が危ない。
今避けられたのも結構まぐれで、偶然だ。
二度もまぐれは起こらない。
だから私は何かが飛んできた方向から決して眼を放さなかった。

「良い判断だが、他の事に集中しなさ過ぎて隙だらけだね。」
「!?」

私は突然の背後からの声に、咄嗟に振り向いた。
そこには、私とほぼ同じくらいの身長をした小柄の女性が立っていた。
見た目こそ小柄なものの、凄く清楚な感じの……所謂紳士の様な格好をした女性だった。

「こらッ! あんた今、私の事ちっちゃいとか思ったでしょ!」
「いえ、別にそんな事は……」
「そんな無表情で言っても説得力無いわよ! ま、今日は機嫌が良いから特に怒らないけどさ。」
「そうなんですか。」

前言撤回、見た目ほど清楚な人じゃなさそう。
結構サバサバした性格の様です。
ってか、どうしてそんな格好してるのか疑問に思えて来た。

「私はネリア=クラックス。 貴方は?」

「えっと……私は、楓 姫兎。」

「カエデ=ヒメト? 変わった名前ね……あっ! もしかして、日本出身?」

「ええ、多分そうです。」

「多分? まぁ、いいわ……取り合えず、色々と聞きたいから私の家まで来なさい。」

「え? でも……」

「来なきゃ、ここで獣の餌になるだけよ?」

「行かせてもらいます。」

人間って、生命の危機を感じるとこんなにも素直になれるんだと思いました。
取り合えず、私はネリアさんを見失わない様に歩いて行き、約10分程でそこには付きました。
とても大きな教会に。
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