短編

□だから…
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放課後の教室。
誰もいないのをいいことに自分の席の隣の机の上に適当に鞄を放り投げ、ガガッと椅子と床のすれる音を気にせずに引き、座ってそのまま机に突っ伏した。
少しして手持ち無沙汰になって、机の中に手を入れてみれば紙が手に当たる感触がした。
憂鬱な気分で紙を取り出してみるとあまりにも心当たりがあって今一番見たくなかった譜面。

『…向いてないのかな』

溜息を付く気にもなれず、だらんと力なく腕を垂らせば、力を入れていなかった手に持った譜面はバサバサと音を立てて床にちらばった。

(ああ、憂鬱だ…)

それを見て慌てて拾うことはせずに目を閉じる。
「練習ならばっちりなのになんでテストでミスするんだお前は」
『すみません…』
「謝らなくていいからちゃんとしろ」
『はい…』

嫌なことを思い出した。けれど目をあけることはせずに今度は思考をシャットアウトしようとした。
「お前、拾えよ」

頭に少しだけ感じた重みと呆れたような声にしぶしぶ目を開ければ、目の前の席に座ろうてしている翔君がいた。よく見る紙パックのジュースにストローをさしている彼を見て頭に乗った重みはこれだったのかとぼーっと思う。

「無人の教室で何、項垂れてんだよ」

私の方に体を向けて座り、半目になりかけの翔君が聞いてほしくないことを聞いてくる。
癪だけど顔を下に向けて小さな声で言った。


『…再テスト』
「また引っかかったのか?」
『……』

全く私と対して身長変わらないくせにズバズバとものを言ってきて、空気というのを読んでほしい。口にして悔しいのか悲しいのかよく分からないけど視界が少しだけ歪んだ。ツンっとくる感じから涙が出そうなのが分かった。
歌うのは楽しくて、この学園に入ったのにプレッシャーに弱い性格のせいで此処ぞと言うテストの時に毎回ミスをしてしまう。こんなことじゃ大勢の前で歌うなんて事は絶対に無理だ。

『辞めちゃおうかな…』
「ダメだぞ」
『……』

翔くんのあまりの即答に何も言わずジッと彼の目を見ていると、真剣な顔をした翔くんと目があった。

「楽しんで歌ってる時はSクラスじゃ2番目くらいに上手いし、才能あるだろ」
『無いよそんなの』
「はぁ……あるんだよ。お前には」
やれやれと言ってため息をつく翔君はあーとか言いながら口を開いた。

「名前が辞めたら一緒に居られねぇだろ?」
『え…』

言葉が出なくてぽかんとしていると翔君の顔がどんどん赤くなっていった。

「名前のこと好きだからできるだけ一緒にいたいんだよ!」

恋愛禁止だから今は付き合えねぇけど…。拗ねたように呟いた翔君の言葉に私の顔も熱くなるのが分かった。


だから辞めるとか言うなよ



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聞いていいですか?甘って何(^q^)
うたプリが好きすぎてやらかした。←
 

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