シリーズ

□石田家の場合
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主君である豊臣秀吉の仇を打つため豊臣軍は三成を大将とし、石田軍となった。

「三成様、せめてお食事を」
「食事など必要ない。下げろ」
「しかし…」
「いらん!」
「は、はい!!」

軍を進軍させている最中、三成は逆臣、家康を討ち取ることに執着心を持ち其れ以外のことは全くと言ってよいほど眼中になかった。




「あのままではいつか体調を崩されてしまわれる」
「どうにか食事をしていただく事は出来ぬのか…」


他の軍に凶王と恐れられようともやはり自軍の大将。
兵達は自分の事を省みない三成のことを一様に心配していた。

「本当ですね。民から頂いた作物を大切にしないとは万死に値します」

皆一様に…?


どうしたものかと話し合う兵士達の会話に続いたのは、軍中には馴れないソプラノの声と少々不穏な言葉だった。

ギギギと錆び付いた金属と金属の擦れ合うような音をたてながら振り返った兵達はニコニコとした擬音語がつきそうな笑顔の主の嫁がいた。


「名無様!!どうしてこの様なところに!?」

問い掛けに、心配になりましたの。と言って頬に手を当てる名無はそこだけ見ればとても良い妻だと言われるだろう。


「殿がいつまで経っても城に帰ってきませんので、私に、執務を押し付けて…」

そこでピキッと一瞬で空気が凍った、兵士達の。
ところどころに棘のある理由にアハハと
愛想笑いをするしかないこの場に居る兵士たちは、逃げたい。と心の中で呟く。

「ねぇ、それは殿のお食事でしょう?私がお届けいたしますね」
「いえ、三成様は、要らぬ。と申されたのでおさげするとk「ん、なんです?」…お、お願い致します!!」

膳を持った兵士が言い切る前に先程から変わらない笑顔で言葉を遮った名無の背後につべこべ言わずにさっさと渡せ。
と言う無言の重圧が見えた気がしてそそくさと膳を渡す。
「任せてください」と三成のもとに向かう名無の背を見てその場にいた全員が安堵の溜息を吐いた。





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