シリーズ

□伊達家の場合
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「なんだよ。普通に寝てるじゃねーか」

聞き間違える筈がない。
この部屋にはこの声の人しか用事も無しに男の人は入れないし、
ぶっちゃけ私は政略結婚だけどこの人のことが好きなのだ。間違える筈がない。

『殿!!!』
「what?!」

被っていた布団を押しのけてバッと起き上がり、いきなり起き上ってきた名無に目を見開いて驚いている政宗に名無は勢いよく抱きついた。と同時に立っていた政宗は名無をちゃっかり抱きとめつつ、後ろに座り込んだ。

『うぇぇぇ!こ、怖かったですーー。ヒック、ぅわぁぁぁ…』
「stop!stop!泣きやんでくれ…」
『ズズー…ごめんなさい』

一人の時は我慢していたのに政宗さんが来た瞬間に決壊したように涙があふれ出てきた。
ヒックっと時折しゃくりあげながら、落ち着かせるように背中を叩いてくれる政宗さんを見る

「で、なんでそんなに泣いてた?」
『え、あ、あの…実は…』

冷静になってくるとかなり恥ずかしいことになってる気がしてきた。
というよりすごく子供扱いされているような気がする(実際されてる)
自覚して羞恥で赤くなりながらも取り合えずこうなった経緯を狼狽えながら伝えた。

『…と言うわけなのです』
「Hum成実か…」
『…あの、取り乱して申し訳ありません…』
「no problem…俺としてはいい事があったしな」
と言いながらギュッと抱きしめてきた政宗さんはそのまま顔を私の首元に埋める。

『(と、吐息が)』

顔に熱が集まるのを感じながら、政宗さんの背中に手を回そうとした時

「そろそろ寝るか」

抱きしめられていた拘束感が無くなった。
そして立ち上がろうとする政宗さん。

『待ってください!…怖いので、その、一緒に、寝てほしい、です』

このまま部屋にまた一人になる。
そうなるともう本当に朝まで幽霊の恐怖と闘うことになる。
慌てて立ち上がりかける政宗さんの浴衣の裾を掴んで頼む。

「〜っ」

政宗さんは数秒、口元に手を当てて顔をそらした。

「OK…」

おやすみなさい

(政宗さん…ありがとう)
(…you're welcome)
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