長め
□猫、
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使うことのほとんどなかった救急箱を元あった戸棚に置き、近くにあった椅子に腰かけると一息ついてちらりとベットの方に目をやる。
ベットには白いシーツと小さくうずくまった黒い何か、たまに身動ぎすると痛々しく巻かれた包帯がちらちらと見えた。
act,拾いました。
お盆も終わったので夏休みの帰省から学園の寮に帰ってきた。
夏真っ只中なのでじりじりと太陽は照りつけ、日本特有の湿気のせいでさらに暑さが倍増する。頬を伝う汗を拭い、駅から寮に向かう私はものの10分程度歩いて、見えた寮の入り口に足早に歩いた。
そして入口の前まで来た私は少しだけフリーズした。
玄関の真正面に小さくうずくまる黒い猫。
『……』
猫は普通警戒心が強いからよっぽど人間慣れしていないと音に気づいてすぐ逃げてしまう…というか私はよく触ろうとして逃げられる。
なのにこの猫は私が半径1メートルのところまで近づいてもぴくりとも動かず体を丸めていた。
(触りたい…)
見たところまだ小さな子猫。
ふわふわした毛が風に揺れるのが可愛い。
荷物を地面に置いてしゃがみこみ猫に手を伸ばす。あと5センチというところであることに気がついた。
『…血?』
猫のすぐそばが少しだけ点々と赤黒くなっているたどると一か所だけ不自然に濡れている猫の毛。
『…怪我してるのか』
怪我のせいでぴくりとも動かない小さく軽い体に少しだけ触り、逃げないのを確認してからその猫をそっと抱きあげ、寮の自室へ急いだ。
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