長め

□その二
1ページ/1ページ


「此処は何処だ」
「え?…あぁ、私の家だよ」
「殺さぬのか…それとも我を使って城に乗り込むか」

クマ次郎に男の子を運ぶのを手伝ってもらったお礼に魚をやり、ついでにご飯も作って家の中に入ると、目を覚ました男の子が布団の上に上体を起こして、こちらを睨み、とても不遜な態度で私に問いかけてきた。

「まぁ、貴様の様な童が我に何かするのは無理だろうがな」

返答の間もなく、勝手に自身の中で結論付けたのか子供にしては随分とらしくない皮肉るような笑みを見せたクソ餓鬼に少しだけ、ほんの少しだけいらっとした。
いや、私も今は小さな子供だけれども…。

「…はぁ、失礼な子だなぁ。私は森で倒れてた君を見つけて、起きないから此処に連れてきただけだし、」

勘ぐり深そうな不遜な少年に心から呆れかえりながら、部屋に入り、布団の脇に食事を置く。

「待て、貴様の様なチビがどうやって我を此処まで連れてきた」
「ん?あぁ、正確に言うと連れてきたのは…見た方が早いね。クマ次郎!」

目を見開いた少年に「あぁ…」と思い、クマ次郎の名前を呼ぶと先ほどあげた美味しい川魚(調理済み)を加えたクマ次郎が器用にこの部屋の縁側に面した戸を開けて姿を現した。


「野生児か、貴様は」
「やっぱり失礼だな君」

さらに失礼なことをのたまった少年の頭を少し小突いたらおもっきり頭を叩かれてしまった。

(こいつ…)
「我を小突くなどふざけるな」

フンと鼻で笑いやがった男の子に「分かったから怪我が治るまでは此処に居るように!!」と半ば強引に言いつけて居候させることにした。


(昔の話)
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ