短編小説
□愛され日和
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「いやぁ、やっぱりファンダリアは寒いなー」
「うむ、ここは殆どの月日は日が出ないからな。他の大陸の人々には寒く感じるのだろう」
「今は春ですからいつもより暖かいんですよ?」
―――ファンダリア王国、ティルソの森。
セインガルド王から勅命を請け、神の眼を追っているリオンたち一行は、この国の首都、ハイデルベルグへと向かって歩いていた。
「えぇー、この寒さで暖かいの!?信っじられない!!」
「まあまあ、ルーティさん……」
ウッドロウやチェルシーが先程言った、(ルーティにとっては)衝撃的な事実に、ルーティは身震いする。
「何をしている。さっさと行くぞ!」
「あ、待てよ、リオン!」
マイペースに歩いていた彼等を戒めるように、リオンが口を開く。
その声には旅が始まった当初のような焦りはなかった。
自分達より数メートル程先にいるリオンとマリーの方にスタンが走ってく。
その光景をただ見詰めていたウッドロウだったが、突如、気を引き締めた。
「気を付けたまえ、リオン君!君たちはこの寒さに馴れていない。身体も思うようには動かないはずだ!!」
ウッドロウがそう言い、早足で歩を進めようとした直後、森の奥のほうから大量のモンスターが現れる。
この地方のモンスターならではの毛皮に包まれているので、寒さは効かないらしく、動きは俊敏だ。
直ぐに囲まれてしまった。
また、少々離れていたリオンたちとは完全に分断されてしまっていた。
「……チッ。囲まれたか」
「リオンは冷静だな。だが、私もウズウズしてきたぞ」
「ファイアボール!!」
敵に囲まれても飄々としているリオンとは反対にスタンとマリーは即座に攻撃を仕掛ける。
そんな彼等の声が聞こえ、一先ずルーティたちは安心した。
「ほら、ちゃちゃっとやっちゃいましょ」
「ですね」
―――戦闘が、始まった。