保存用-狭霧

□優しいor意地悪?
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何があったか分からないが、ブルーが帰宅以来部屋に閉じこもっている。
こちらとしては久々の休暇なので、一緒にゆっくりしようかと考えていたがこの状態ではそれも叶わない。
「ブルー」
声をかけるが返事は無い。
「・・・開けても良いか?」
「駄目」
小さく、だがしっかりと今度は返事があった。
「姉さんが作ってくれた菓子があるんだが、食べないか?久しぶりにお前の紅茶が飲みたい」
大抵ならこれでつられて出てくるはずだが。
今日はどうもそう簡単な事態ではないことが扉の様子で分かる。
「何があったんだ?」
「・・・」
どうしても話したくないらしい。

「・・・久々の休暇に恋人の顔を見れないのは悲しいものがあるんだが」

実際、朝早くに彼女が出掛けていたもので、ちょうど自分が皿を洗っている時に帰ってきたために一度も顔を合わせていない。
まさかこのまま今日が終わってしまうのかと考えると虚しいものがある。
というかここ一週間お互い用事があり忙しく、全く会っていないに等しい。
いつもなら彼女が事務に押しかけて来るので、こうまで顔を見ないというのは非常に珍しい事態だ。

しばらくの沈黙の後、か細い声が聞こえた。

「・・・近付くなって言われたの」

「・・・誰に?」
「あんたのファンの子達・・・あんたがあたしのこと迷惑だって思ってるって聞いたのよ」

どんな嘘だ。
そんなこと言った記憶が無い。
「・・・そんな嘘を真に受けるのかお前は」
若干の呆れと愛しさ。
「・・・迷惑だと思われていても押し切るのがお前だと思っていたが、しおらしいところもあるんだな」
「・・・はぐらかさないでよ」
声音で分かる。泣きそうだ。
これは本気で心配しているのだろう。
自分も随分愛されたものだと自惚れるのを許して欲しい。
言い出したファンへの処分は後で考えることにして。

「入るぞ」

遠慮なしにドアを開ける。
涙が溜まって今にも零れそうな青が驚いたように見開かれた。
「やっと顔が見れた」
笑うと、クッションが飛んで来た。
「バカバカバカ―ッ!!!」
「この件に関しては俺は無実だ」
「あんたの男前が全ての原因よ――――ッ!!!」
なおも暴れようとする右手首を掴む。
すると突然大人しくなった。
「・・・・・・・ねぇ」
「何だ?」
「あたし、・・・迷惑じゃない?」
ここは正直に。
「ケース・バイ・ケース。時と場合によりけりだな」
「・・・あっそう・・・」
「ここで本音を隠して“迷惑じゃない、だから安心しろ”というのは俺じゃない」
「あ、言えてる・・・優しいくせにそういうときだけ意地悪よね」
掴んでいた手首をそのまま引っ張って立たせる。
「ちょっと、グリーン!?」
リビングまで連れて行き、姉が作った菓子を用意してソファーに座り。
「紅茶を入れてくれ」
「・・・こんのマイペース」
わざと心外だという風な顔を作り、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


「俺はお前が思っているほど優しくはないぞ?」


一人にして欲しいという奴を一人にしてやれるほど、優しくはない




titled by確かに恋だった










処分はご想像にお任せします(笑)

狭霧

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