保存用-狭霧

□朝起きたら
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朝起きたら嫁が大変なことになっていた



雷のけたたましい音で目が覚めた。
思わず息を呑む程に雨が降っている。目覚めの光景としては最悪だ。
何か悪いことが起こるんじゃないかと思ったのが運の尽きだった。

隣のベッドを見ると空で、大方面倒臭がりなアイツは家に帰ってきてから力尽きてソファーで眠ってしまったのだろう。
仕方のない奴だと思いながらリビングに行く。

「ブルー、朝だ」
ソファーを覗き込むとそこにいたのは横になっている長髪の恋人ではなく。


「あ゛・・・よ、ようグリーン・・・」


起き上がって呆然とした、髪の少し長めな綺麗な男がいた。

「・・・?・・・!!??」

「あー・・・いや、これ・・・なぁ・・・」
いつものソプラノではなくテノール。無駄に良い声だ。
「朝起きたらこうなっててかなりビビったんだよ・・・しかも言葉遣い意識してるわけじゃねぇのに男口調だし」
驚きすぎて声が出ない。
何なんだこの悪夢!?
夢か夢なんだなこれは成る程そうか夢か。
「・・・グリーン・・・お前かなりイタい奴になってるぞ・・・」
恐らく声に出していたらしい。
どうすれば良いんだこの状態は。

折角の休日が酷い雷雨と恋人の男化によって見事に最悪の日に変わり果てたのは言うまでもないだろう。


「グリーン!!ブルーが男になっちまったってホント・・・うわぁぁぁぁああああ何だそのイケメン!!??」
「わああああああ!!グリーンさんその方はどなたですか紹介してください!!!」
「イエロー!?」
玄関に入るなり大騒ぎ。
「・・・五月蝿い。静かにしろ」
こっちはこっちで苛つきモードに入っているというのに呑気な2人組はブルーを囲んで騒いでいる。
ブルーはブルーで満更でもなさそうな顔をしているのが苛々を加速させる。
「ええええッ!!??ブルーさん!?」
「そうそう、起きたらこうなってて驚いたのなんの」
「何か負けた気分だ・・・!!」
「ハイ、ブルーさんの完全勝利です!」
「イエロー!?お、お前まさか・・・!!」
「俺の嫁に来るか?イエロー」
「ハイッ!!!」
「イエロー!?」
「おいブルー!?」
「じゃあデートするか」
「どこ行きます?」
「そうだなー・・・」
楽しそうにリビングから出て行く2人をただ唖然と見守る。
「街行って来る。留守番頼むな」
言い残して颯爽と出掛けて行った。
「おーぅ任せと・・・待てえええええぇえええぇ!!」
「・・・ブルーが・・・男・・・イエロー・・・」
「おいグリーン何してんだよ!?追いかけるぞ!!」
「無駄だレッド・・・あのまま2人は宝石屋に行って不動産に行きその後式場を探す為にネットカフェに入る・・・俺達にはもう止める術が残されてはいないんだ・・・!!」
「ってかもう既に俺はお前を止められねぇよ!!!しかも何泣いてんだよ!?」
「俺は今年の俺の誕生日にブルーにプロポーズしようと決めていたんだ・・・なのに・・・ッ」
「男泣き無駄に似合うよなこの野郎・・・ってそうじゃねえええ!!!」
もうお前なんか知らねえへタレ!とヘタレッドに言われ結局1人部屋に取り残された。
あいつはかつて体験したことがあったんだろうか、恋人が朝起きたら男になっているという最悪の事件を。
・・・いや、あいつは初めイエローを男だと思ってたんだよな・・・
男に惚れちまった・・・と相談してきた時の落ち込みぶりは半端ではなかったが、イエローが女だと判明した後の落ち込みぶりも中々だった。
あの後ひたすらイエローに謝ってたな、レッド・・・
冷静さが戻ってくる。
考えてみれば相当暴走していた気がする。
すまん、レッド。

さて、ブルーを探しに行こう。

朝の豪雨はいつの間にか上がり、太陽が顔を覗かせていた。


「・・・んで結局来たのなグリーン」
「ああ。迷惑をかけたなレッド、悪かった」
「グリーンが戻って来た・・・!!」
「泣くな鬱陶しい」
「グリーンだあああ!!!」
「喧しいバレるだろう。あそこに居る2人で間違いないんだな?」
「あ、あぁ。ずっと尾けてるからそこは保証する。でもなーんかブルーの様子がおかしいんだよなぁ・・・」
「おかしいって・・・どういう意味、だ・・・?」
「あれ・・・ブルー泣いてないか?」

「ブルーさんすっごいモテてましたね!!」
「ハハッ。イエロー居てくれて良かったよ。じゃねぇと俺今頃餌食になってただろうからさ」
「そ、そんなことは・・・」
「照れ顔可愛い」
「笑顔眩しいです!・・・ってブルーさん?どうしたんですか・・・ブルーさんッ!?」
突然泣き出したブルーをどうすることも出来ずオロオロしていると、

「イエロー!どうしたんだ?」
「あ、おい待てよグリーン!」

家に置いて来たはずの2人がどこからともなく現れた。
「あ、レッドさん!!グリーンさん!!」
「何があったんだよ?おいブルー・・・」

「・・・ッ、グリーンがッ・・・」

イエローとレッドはグリーンを見る。
本人はわけも分からずただ目を瞬くだけ。

「追いかけて来てくれないから・・・ッ俺なんかもういらないんだッ・・・!」

「そんなことないですよ!!現にグリーンさんここに居るじゃないですか!」
「居るわけない!!アイツが欲しいのは俺じゃなくて女の、」

「男でも女でも構わない!!俺が欲しいのはお前だ!!!」

「え・・・グ、グリーン・・・?」
思わず逆ギレに近い形になってしまったがそこは気にしないことにしてもらおう。
「俺にはお前が必要なんだ。お前がイエローと一緒に家から出て行ってから俺がどうなったか知ってるか?かなり暴走してレッドに迷惑をかけた。嘘だと思うならレッドに後で確認してみろ」
勢いでまくし立てれば今度は青い目が瞬いた。

「男だろうが女だろうが性別なんて関係無い・・・帰ってきてくれ、ブルー」

「グリーン・・・」


グリーンの胸に飛び込んだブルーも、安心したようにブルーを抱き締めるグリーンも、2人を見て感動のあまり涙を流すレッドもイエローも、誰一人覚えていなかった。










ここが街のど真ん中であることに・・・


「え、ちょ、グリーン先輩てそういう趣味だったのか・・・!?」
「う・・・嘘・・・!?」
「姉さんを差し置いて男に走るだと・・・?・・・許すまじトゲ頭・・・!!!」
「ワァオ・・・ボ、僕ハどんな恋愛モアリだと思ウ、ヨ?」
「あ、アたしモそう思ウッタイ!!」
「・・・2人ともカタコトだって・・・無理すんな・・・」
「おぉーぅ・・・見たかダイヤ・・・?」
「うん、見てるよー。ブルーさんと何かあったのかなー?」
「あの男性の方、ブルーさんによく似ていらっしゃいますけれど・・・」


押しかけて来た後輩達に質問攻めに遭うのは後の話。
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