保存用-狭霧

□Romance
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「あんたとの恋はロマンスにしたくないの、あたし」

何を言い出すかと思ったら随分突拍子も無いことで。

「・・・意外だな」
女はそういうのに憧れるんじゃないのか?
目でそう問えば、冷たい笑みが返って来た。

「意味、知らないでしょ?“ロマンス”の」
「恋物語じゃないのか」
「その意味もあるわ。でもあたしが言ってるのは違う“ロマンス”」
「じゃあどんな意味だ」
悪戯っぽい光が目に宿る。
「ここで教えるのがあたしだと思う?」
「断じて思わないな」
「じゃあ教えてあげる」
楽しげに蒼が細められる。
「・・・お前と話すとどうも化かし合いになるな」
「あら。あんたあたしを化かせたことあった?」
「あぁ」
その度に仕返されて結局負けるのは自分だったが。
「で、意味は何なんだ?」

英和辞典を指差してクスクスと笑う。
「ここ」

romance
(特に情熱的だが長続きしない)恋愛(関係)

「・・・ククッ」
「何か変な単語でも見付けたの?」
「いや・・・俺にこれを言うか、と思ってな」
「?」

俺に“情熱的”要素があると思うか?お前は。

逆にそう訊いてやれば「確かに」と笑う。

「コーヒー入れてくる」
「砂糖とミルク忘れないでね」


あぁ、熱いのは無理だが甘いのならいけそうだ。

「あんた猫舌だっけ?」と首を傾げた青を愛しく思った。








たまには落ち着いたものを。
授業中辞書を見て突発的に思いついたネタです

狭霧

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