保存用-狭霧

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「な・・・何のほとぼり?」

「見合い騒動だ」

「・・・はあぁ!?」

「騒ぐな。良いから話を聞け」

「あんた何様よ・・・」

「王子だがそれが何か」

「うわぁ・・・」



かいつまんで説明するとこうなる。
隣国の姫との見合い話が持ち上がっているが、その姫は先程夢に出てきた自分の幼馴染と恋仲で、奴も一応王子なのだからそちらと婚約するからと見合い話を断れば良いものを、彼女に何らかの断れない理由があるらしく、その縁談がかなり近くまで迫ってきたので誰も思いつかない場所に逃げ込もうと思って逃げ込んだのがこの森だった、というわけだ。



「長ッ!!!っていうかそれだけ!?」
「いや、厳密に言えばそれは用事の半分だ」
「じゃああと半分は何よ?」
目を伏せる。

「・・・探している者がいる・・・・・・幼い頃に、どうやっていつ消えたか分からない幼馴染の姫を探しているんだ」

「・・・・・・一つ質問があるの」
「?」
青が真っ直ぐ緑を見た。





「あなたの名前、何?」




うっかりベッドからずり落ちそうになったのは秘密だ。

「グリーンだ」

「そう・・・あのねグリーン」

「何だ?」

「うちに住むの、あたしは別に構わないんだけど・・・弟がいるのよ。あの子今は用があってこの森には居ないんだけど、あと3日か4日で帰って来るの・・・あの子が許してくれるかどうか分からないわ・・・」

「・・・それは、どういう意味でだ?」

「・・・・・・あの子」

顔を伏せがちに、魔女は口を開いた。




「かなりのシスコンなの・・・」




「・・・」

親近感がわいたことについては魔女には黙っておこう。
「だから多分“見知らぬ男が家に姉さんと2人っきり”な状態だったって話したらどうなるか分からない・・・いや、逆に楽しみね!!!うん!良いわよ!部屋はあるから!!」
突然ツヤツヤとした笑顔になった魔女を見つめる。
「・・・俺は生きて帰れるのか・・・?」

素晴らしい笑顔で魔女は言った。





「うん!!多分!!!」




「そう言えばお前の名は何だ?」
「無いわよ」
即答されたので言葉の意味を理解するのに時間がかかる。
「無いって・・・は?」
「あったんだろうけど忘れちゃった。弟はずっとあたしのこと姉さんって呼んでるし、あんたみたいなお客さん珍しいから名乗ることもなくて。しかもずっと魔女って呼び名で通ってるでしょ?だから“魔女”で良いわよ」
「・・・そうか」



名を訊いたとき、一瞬瞳に影が差したことなど、グリーンは知る由も無かった。




To be continued...

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