BOOK2

□金黒の世界
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俺は産まれた時から両親に煙たがれていた。

特に父親からは親の敵を討つような視線を何時も置かれていたな。
まるで俺を嫉妬するような男の目をしていたのが印象的だった。

何でだって真剣に悩んだ時があったけど、妹が産まれて暫く経った時に両親が吐き捨てるように話し始めたんだ。俺の出生の話を。


俺は父親と血が繋がって無い。母親と違う男から出来たガキだった。

これを聞いた時、やっぱりなって納得した。だって俺は父親と全く似てないんだから。
産まれたばかりの妹は、目元や髪や瞳の色がとても似ていた。和らげな目元、光に当たると焦げ茶になる色。

俺は黒髪で純黒だった。
しかも、相手の男と髪色以外瓜二つの容姿らしい。

こりゃ煙たがられる筈だ。


何故違う男と出来た子を育てているかっていうと、そういう契約何だそうだ。

事業に失敗して莫大な借金が出来て日々貧しい生活を強いられていたある時、ふらりと身なりの良い一人の男が現れ、こういったそうだ。


『お前達の背負っている借金とやらを儂が全部払ってやろう。なんならお前達の望む金額を別で支払ってやっても良い。
その代わり、その女が儂の子を孕め』


最初は拒否したらしい。

そりゃそうだ、いきなり現れた男がいきなり自分の子供を産めなんてトチ狂ってる。
しかも額が額。金持ちの道楽に付き合ってる暇は無いと突っぱねたそうだ。

けれど押し掛けてくる借金取りや、貧しい生活に我慢がならなくなり、男の条件を呑んだ。

たった一晩交わっただけ、それで簡単に俺を宿させた男は満足し姿を消したと言う。

部下らしき異国の男から借金は返済したと伝えられ、そしてもう一つ条件を出された。


『このまま宿した御子を育ててくれれば、毎月多額の金を貴方達に渡しましょう。養育費が欲しければ、また別で支払いましょう。どうですか?』


これに両親は悩んだという。
金は欲しい。けれど違う男から出来た子供なんか育てたくない。
そして出された結果は今此処にいる時点で言うまでもないだろう。

人間欲には勝てなかったようだ。


だからこんな贅沢してんのかと同時に納得した。

高級住宅地の立派な一戸建てに住み、家政婦も何人か雇っている。父親は一応仕事をしているらしいが、明らかに日々湯水のように使っていく金とじゃあ明らかに稼ぎが足りなかったからな。


だから俺を追い出したくても追い出せない訳か。親子三人が賑やかに騒ぐ声をBGMに一人でまた納得した。

俺は精神が普通より成熟するのが早かった。まあ父親が気味悪そうに言った時点まで無自覚だったがな。
だから普通の子供が聞いたら泣き叫ぶような事も平気で聞いていた。


それが俺が五歳の時だった。



そして次にとった俺の行動は髪を金に染める事だった。

五歳児じゃ自分で染められないから美容院でやった。
美容師は最初は渋ったが万札を二、三枚握らせればコロリと態度が変わった。ふっチョロいぜ。

そして綺麗に染められた髪をいじくりながら帰れば、まず始めに母親が絶叫。父親絶句。んで殴りかかって来た。

身体能力も高かった俺はそれを難なく避け、自室に籠もった。


等身大の鏡で自分を見れば、純黒の瞳に染められた金髪。んで幼いながらも整った、両親共々全く似ていない顔立ち。
(両親は平凡な容姿だからな。妹はよく見たことが無いから判らん)

両親は詳しくは言っていなかったが、親父は金髪純黒瞳だったそうだ。

だから金に染めた。

嫌がらせ半分興味半分でやったんだけどな。
まさか父親に殴られるとは思わなかったが、でもまあ反応がオモロかったから良しとしよう。


俺は自分の整った容姿に自覚がある。
だから成長すればとてつもなく美形になるだろう。

だから瓜二つだという親父も相当な美丈夫だったに違いない。
ほぉー、と思いながらまだ見ぬ実父を頭ん中で思い描いた。


ドンドン父親の叩く煩いドア音をシャットアウトしながら。





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