少女A

□06
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「如月入って来い!」


『ひゃっひゃい!!』


変わった返事と共に彼女はおそるおそる入って来た。


「あ」


彼女を見た瞬間、声を漏らしてしまう。


なぜなら俺が2日前に見た顔だったのだから。


あの子、転校生だったのか。…腰に竹刀を付けてるなんて変わった子だな。


なんてことを思いながら俺は彼女を様子を伺う。


彼女はよほど緊張しているのか林檎みたいに顔を真っ赤にして手と足を左右同時に動かし、まるでロボットのようにスローモーションの動きをしている。


つい吹き出しそうになったけどあの子に失礼なので必死に抑えた。


周りの反応を見ると月子はキラキラとした目で彼女を見て、羊と哉太は必死に笑いを堪えている。


そして極めつけに―


ドシャッ


彼女は思いっきり頭から転んでしまった。

ほんの少し教室に沈黙が走った。



「ぷっ……あっははははは!」


が、その沈黙もすぐに破られる。


堪えきれなくなったのか哉太と羊が大爆笑。それを皮切りに笑い出すクラスメート達。


その光景をぽかーんとした表情で見る月子。


…いくらなんでもこれは酷すぎる。

これじゃああの子が可哀想だ。


「…おい羊、哉太」


二人を窘めようとするが俺の声は届かない。


小さな怒りを感じていると―俺は見てしまった。


「!」


―起き上がる時に目に涙を溜めていた彼女を。


『……失礼しました!』


そんな表情を見たのはほんの一瞬のことで。彼女はすぐに教室から飛び出してしまった。


「っ如月!お前らはちょっと自習してろ!夜久、ちょっとついてきてくれないか!」


「は、はい!」


月子はガタッと立ち上がり陽日先生と教室を出る。


「月子連れて行かれちゃった。どうしたのかな」


「さぁな。それよりさっきの転校生変な奴だったよな!」


「本当だよ、あんな変な動きした女の子初めて見た……ってす、錫也?ど、どうしたのそんな怖い顔して、さ」


「俺から少し…話がある」


















「…まさか別れてから30分も経たずに戻って来るとは思わなかった」


『…………すみません』


「こんなに派手に転んで…女が顔に傷を作ってどうする」


『…………すみません』


「…さっきから謝ってばかりだな、お前は」


『…………すみません…って痛い痛い!擦れた所をつねるの止めて下さい!』


浅い眠りから目覚め、ベッドから起き上がりカーテンを開けると泣きながら絆創膏を貼る如月の姿が。


俺を見た瞬間、星月先生ー!!と子供のように泣きついて来た。


如月は不器用なのか絆創膏をあまりにも不恰好に貼っているため泣き止んだ後、俺が貼り直した。


そして今に至る。


「…この広い校舎の中、どうやってここまで辿り着いた?」

『帰省本能が働きました』


…それは本気で言っているのか、それとも冗談なのか。


『左頬とおでこに擦り傷…ですか。へへ、絆創膏なんかして私、不良に見えます?』


「…笑い事じゃない。それに…無理に笑わなくていい」


『…すみません』


涙がうっすらと浮かんだ目が少し揺らいだ。



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