少女A

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『……あ、れ?』


目をパチッと開けると
真っ白い見慣れた天井。


保健室だ。


『…何で私、保健室に?』


起き上がりカーテンをシャッと開ける。

…もう、頭痛くないや。


『あ』 



「千春ちゃん大丈夫?よく眠れ『失礼しました』


私は再びカーテンを素早く閉める。


な、何であの人が居るの…?

今は授業中なんじゃ…。


「ねえ。僕の顔を見た瞬間カーテン閉めるなんて酷いじゃない」


『うひゃあっ!』


背後からいきなり耳元で囁かれ身震いしてしまう。


「ほんと面白い反応をするね、千春ちゃんは」


『な、何故…水嶋先生が此処に居るんですか!?』


振り向くとそこには水嶋先生が相変わらず鳥肌が立つような笑顔を浮かべていた。

…この人本当に苦手。


「何故って当然、千春ちゃんが倒れたって聞いてサボりついでに…いや心配して来てみたんだ」


『…陽日先生に後で怒られても知りませんよ』


このもじゃ眼鏡の名前は水嶋 郁。教育実習生らしい。

昨日ちょっとだけお世話になった人だ。

…あまり思い出したくないことなのでこれ以上は言わないことにしよう。


「それに、さ」


『わっ!』


反応するのが一瞬遅かった。

水嶋先生は私の腕を引っ張り、先程寝ていたベッドに押し倒した。


「楽しみならここにあるしね」


視界に入るのは白い天井と水嶋先生の顔。

起き上がろうにも先生が私の両腕を抑えている。


『せせ…先生!ちち近い!近いです!早くそこを退いて下さい…!』


「千春ちゃんってさ、昨日も思ったんだけど無防備過ぎない?月子ちゃんより重症だよきっと」


『重症って…!そ、そんな病人みたいに!それに私はいつでも防備完璧ですから!』


「…ふうん、ならいいんだけど。けど気をつけて」


『?』


先生は突然ずいっと顔を近付けると―


「僕が必ず、千春ちゃんを落としてみせるから」


耳元でそう囁いてぱっと顔を離して、してやったりと言わんばかりにニヤリと笑う。


『な、な、な…!』


ちちち…畜生!この人耳元で囁くの好きだな!


囁かれた耳がくすぐったい。それに恥ずかしさの気持ちが一杯で言葉が出ない。


「顔真っ赤にしちゃって千春ちゃん、可愛いね。キスしてもいい?」


『…っ!セクハラでうう訴えますよ!』


「そんな震えた声で涙目になってると誘ってるようにしか見えないんだけど」


『……っ!』


ああもう!誰かこの人の頭を何とかして下さい!


「郁、お前またサボってた…」


タイミングが良いのか悪いのか星月先生が気だるそうにカーテンを開けた。星月先生は目を見開き私達を凝視している。下手したら完璧誤解されてしまうこの状況。


『星月先生…!あの、これは、そのですね…』


「…琥太にぃタイミング悪すぎこれからがお楽しみだったのに」


『ちょ、変な誤解生むような発言しないで下さい…!』


「…郁、如月をからかうのはもう止めろ。さっさと退いてやれ」


「…はいはい」


水嶋先生は渋々退いて残念だったね。と言って笑った。

何が残念なんだ…!


今日学んだこと。

水嶋先生とは絶対に二人っきりになってはいけません。

なので遭遇したら全力疾走して逃げよう…そう心に誓った今日この頃。




保健室でランデブー



 

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