小説

□赤い彼女と黒い彼 2
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今日のシグはヘンだった。

いつもヘンといえばヘンかもしれないけどそういうヘンじゃなくて。

「内側から出ている何か」にひどく違和感を覚えたのかもしれない。

それを具体的に述べろと言われたら説明なんてできないんだけど。

シグ自身もそれをなんとなく分かっているようだった。

突然一歩引いたような態度を取ったりして。

そして、今私と彼は保健室にいる。

そう、シグが急に倒れた。

先生は夏バテじゃないかとか言っていたけどあたしはこれはそんな簡単なものではない、と分かっていた。

「シグ…。」

そっと呼びかけてみる。

少し陽に焼けた頬に手を伸ばす。

彼は一体どうしてしまったんだろうか。

「そろそろ起きようよ、シグ…。」

頬を軽くつねってみたが起きる気配は全くない。

もうすぐ学校が終わる時間だというのにシグは規則正しい寝息をたててひたすら眠っている。

今、シグから離れてはいけない。

そんな気がしてならないのだ。

頭が痛い。

ここ最近ずっとそうだ。

何かの前触れではありませんように、なんて自分らしくないことを思ったりした。

「あ、時間だ…。」

下校時間になってしまい、どうしようかと悩んでいたところ。

「…アミティ?」

やや低くかすれた声に振り向くとシグが瞼をこすりながら起き上がっていた。

「シグ…!起きたんだね!良かった!急に倒れたから心配したんだよ!もー!!」

「たおれた…のか。」

シグがぽかんと呟いた。

「なんか…体がヘン。」

「あれだけ寝たらヘンにもなるよー!ほらもう下校時間だよー帰ろう。歩けそう?」

「ん…。」

ベッドから降りるとおぼつかない足取りでアミティのいる場所まで歩く。

「ほら、危ないよ。」

ふいに手を差し伸べられる。

「ごめん」

二人の手が触れ合ったとき。

「!!」

シグが触れた手を勢いよく離した。

「シグ?どうかした?」

「…アミティ、僕に、近づいたら、だめだ。」

「え」

シグの息が荒い。
一体どうしてしまったんだろう。
苦しそうな表情で続ける。

「わかんない、けど、誰かがそう言うんだ。」

「誰か…?」

「だから…ごめん!」

そう言ってシグが一目散に私の横を駆け抜けた。

一体なにが起きようとしているのか。

私は少し遅れて走り去るシグを追いかけた。





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