小説
□想い想われ
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それはとある昼下がりにやってきた。
「…なんでお前がここにいるんだ?」
「何か不都合でもあったか?我が魂の片割れよ。」
「あーっ!シグと怪しいクルークだあ!いつものヘンなクルークはどこいっちゃったのかなあー?」
二人の男子の険悪な雰囲気をよそにアミティが空気を読まずに割り入った。
そう、まさに二人の雰囲気の悪さの原因は彼女、アミティなのだから。
「久しぶりだな、アミティ。相変わらずお前は美しい…どうだ?私と一緒に力を合わせてこのチンケな街を支配下に…」
「え」
アミティに詰め寄り、手を握ろうとしたクルークにシグはすばやく立ちはばかる。
「アミティに触らないで。」
クルークの眉がぴくりと動く。
「ほう…なるほど、そういうことか。」
「うん、僕、アミティ大好き。だからお前の入るすきはない!」
「!!シグ!?」
さすがのアミティもシグのストレートな一言に焦りを隠せない。
「そういうことだからあやしいメガネにはアミティは渡さないよ。アミティは僕のだ。」
そう言うとシグがさり気なくアミティを抱き寄せたのち自分の胸に納め、ぎゅーっとした。
「…さすが我が半身。本能的に自分に相応しい伴侶を選ぶとは、だがな。」
クルークが一歩引き手を天にかざす。
「相手が悪かったと思え!!イグニス!!」
「え…クルーク!?わわわ!!シグ!!あぶあぶあぶな…!!」
「シアン!」
どごん!
お互いの魔法がぶつかり合い、相殺する。
「なかなかやるな。」
「アミティは僕が守る。」
そんな二人を見てアミティはやっと状況を理解した。
「ふ、二人とも!!だめ!!やめて!!こんなところで魔法使ったら危ないよ!!」
シグの後ろからアミティが飛び出し二人の間に割って入る。
「どけ、これはは私とこいつの問題だ。邪魔するならお前とて容赦はしない。」
「アミティに怪我させたら…どうなるかわかってるよね?怪しいメガネ。」
ゆらりと冷たい目線を向けて構えるシグ。
「わあああ…!どんどん事態が悪い方に進んじゃってるよお…!!」
「いくぞ…」
「来るなら来い。」
二人とも目が本気だ。
「だ、だめえーーーーー!!」
アミティは思わず大声で叫ぶ。
その時。
「あらあら、シグ君に…クルークさん?何だかいつもと随分雰囲気が違うのね。」
「アコール先生!!」
「だめですよ、いくらアミティさんを賭けた戦いだからって周りを巻き込んでいるようでは素敵な男性としてはまだまだですよ。」
二人の動きはぴたり、と止まった。
「だってメガネが。」
「しかしこいつが。」
「はいはい、言い訳は補習の後に聞かせてもらいますね。さあ、教室に戻りますよ、二人とも。」
アコール先生の笑顔からただならぬオーラが放たれ、思わず三人はびくりと震える。
「くそ…なんで私が…。」
「怪しいメガネ。大人しく言うこと聞いとかないとヘンなメガネが大変なことになる。」
「む…。これは避けられぬ運命、か。」
「さあ、行きますよ、二人とも。」
アコール先生のうっすら黒い笑顔をバックに二人は教室へと連行される。
一瞬アミティとシグの目が合う。
そういえばさっきシグ、私のこと好きって言ってた…?
今更ながら改めて思い出すとドキドキしてしまう。
シグの唇が動いた。
『ま た あ し た』
そう言って柔らかく微笑むシグにアミティは更にドキドキが止まらなくなって下を向いた。
「ふん、マセガキどもが…。」
「悔しいんだろ、メガネー。」
「二人とも無駄口ばかりたたいていたらチョーク10連射の刑ですよ。」
「「!!!」」
その夜、あんなことを言われたアミティは明日どうやってシグに話しかけようかひたすら悩むことになる。
おわり