小説

□Motherからあなへの愛
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1965年12月24日、町は、ホワイトクリスマス。
寿司屋の娘として、この世にみゆきが誕生した。
寿司屋の稼ぎ時に生まれた、いわゆる迷惑な子供として扱われた。
「おめでとうございます」
「女の子ですよ」
「はい」
「まったく、クリスマスイブに陣痛起きるなんて、迷惑だわ」
「早く、店に戻れよ」
「うん」
健康な子供が生まれても、喜びもなかった。
そう、私は、一生迷惑な子供扱いが始まろうとしている。
この時は、まだ、創造もできない赤ちゃんだったから。


母、紀子が退院して、家に帰ってきた。
けれど、父、秀雄は、冷たく、産後休ませることなく、お店に出させた。
「いらっしゃいませ」
「あれ、奥さん、生まれたの?」
「はい」
「いつ、退院したの?」
「昨日です」
「え!!!」
「だめだよ」
「産後、寝てなくちゃ」
「おい、自分の奥さんの体どう考えているの?」
「店は、いいから、寝なさい」
「店が、忙しいんだ、そんなことできるか!!」
「お前、殺されたいか!!」
「ふざけんな!!!」
「お前、ちょっとで出てこい!!!」
「一発殴ってやる!!!」
「いいえ、やめてください」
「本当に、忙しい時に、生まれたから、迷惑ですよ」
「いいのです、上の子供も、同じように、産後休んでないですから」
「は?」
お客様は、呆れ気味で、答えた。
「子供、生まれて、嬉しくないの?」
「可哀そうに」
「もう、帰るわ」
「気分悪い」
「はい、お勘定」
「もう少し、子供のこと考えて育てろよ」
「じゃないと、子供が不幸だ」
「あ!!」
喧嘩腰しに、お客様は、帰っていった。
でも、紀子も秀雄も、反省しない。
「まったく、まゆみのおかげで、客帰ったじゃない」
「本当に、迷惑な子ね」
「まったくだ」
「おぎゃー」
まゆみが、ミルクで、泣き始めた。
「もう、うるさい」
「さっさと、泣きやませろ」
「うるせ!!」
「これだから、赤ん坊は、嫌だ」
紀子が、ミルクをあげていると、秀雄がせかせた。
「おい、店に出ろ」
「はい、今、行きます」
「哺乳瓶かまして、今、行くわ」
「あ!!そうしろ」
紀子も、秀雄も、子供より店が大事であり、まともに、子育てしていない。
上の兄貴は、祖母に育てられた。
兄貴は、死んだ祖父にそっくりで、おとなしいいい子だから、祖母は、兄貴ばかり可愛がり、兄貴とまゆみとの差別が激しかった。
「ほら、たかぼう、おばあちゃんのケーキお食べ」
まゆみが、手をケーキに伸ばすと、祖母は、「お前じゃない」と、まゆみの手を叩いた。
「お前なんか、嫁にもいけない」
「性悪」
「たかぼうは、本当に可愛い」
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