小説

□蛍
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遠い記憶の中、光の綺麗な蛍の面影がある。
優しい母のような人だった。
今は、どうしているだろうか?

あの人が、母さんだったら・・・・。


伊集院誠は、伊集院グループの御曹司である。
彼は、金持ちではあるが、何か心満たされないでいた。

「誠?」
「なんだよ」
「新しい家政婦さんだ」
「紹介しよう」
「はじめまして、安城みきと申します」
「よろしくお願いいたします」
「ふ〜ん」
「随分、若いな」
「安城さんは、誠と同じ年だ」
「そうなんだ」
「君も、苦労しているわけ?」
「親父の妾?」
「誠!!」
「失礼じゃないか!!」
「ま!!」
「よろしく!!」
誠がみきに手を差し伸べた。
「あ!!」
「どうもありがとうございます」
みきが、誠の手を握った。
誠は、みきの温もりを感じていた。
どこか懐かしいような、そんな感情を抱いていた。

掃除をしているみきに誠が近づいてきた。
「ね?」
「なんで、その年で、家政婦しているわけ?」
「あ!!」
「いいえ」
「申しあげることのほどでは」
「ふ〜ん」
「ま!!いいか」
「学校は、行ってないわけ?」
「はい」
「今は」
「ということは、以前は通っていたわけ?」
「えっ!!ええ」
「そうなんだ」
「可哀そうだね?」
「いいえ」
「今、ここで、お仕事させていただいて、幸せです」
「そう?」

誠は、愛情に飢えていた。
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