徒然会話・小話。(アナザー大罪)

□裏切り者は誰だ
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「……………」


………男が完全に外へと消えた事を確認し、静かに里衆が口にする。


「………後つけろ。里には俺が報告しとく。奴が何処の誰なのか絶対に突き止めて来るんだ。行け」

「————おう」


短くそう返事をして店の中に隠れていたもう一人の里衆はタッと外へと飛び出して行った。

………里衆の目に忍びの陰が宿る。


「………、何処であの情報を手に入れた…?裏の依頼のやり取りにこの店は一切噛んでねぇ。繋がりなんざ一切見える筈はねぇのに……」


さすがに動揺は隠し切れず、細めた目で里衆はそう呟いた。
そして静かに店の外へと出て、暖簾の脇…『商い中』の掛け札を『休憩中』へと掛け替えて、くるりと身を翻す。

「………ん?何処か行くのかい?何でも屋さん。何か用事か?」

「————ああおやっさんか。いやー……何か訳の分かんねぇ変な客が来てな今。ちぃと気分悪くなっちまったから散歩でもして気分変えて来ようかってな」

声を掛けて来たのは、隣の茶屋の店主である旦那。
若干ではあるが腰も曲がりもういい歳であるにも関わらずまだまだバリバリと現役で店先を回している元気で活発な爺さんだ。

「……変な客?何だ、何か言われたのか?」

「………おやっさん“忍び”って知ってるか?」

「忍び……と、言やぁ……あれか?裏でお天道さんには顔向け出来ねぇ人道に反した事引き受けてやってるとかっていう噂の……」

「そうそう」

「その忍びがどうした?」

「…何でも、何処ぞやでこの店がその連中と繋がってるとかって話。聞いたらしくて…“仲介してくれ”ーつって言って来たんだよいきなりさ。思わずぽっかーとでぇけぇ口開いちまったぜ俺ぁ……」

ポリポリ、と頭を掻いて里衆がまた一つ小さく溜息を零した。

……そんな里衆の言葉に、一瞬“は?”と呆気に取られて店主も言葉を失っていたが……

……次の瞬間

「………、ふっ……ふははあははははははは!!!!何っだいそりゃあ!!あんたとこの店とそんなおっかねぇ連中とに繋がりがあるってぇ!?ばぁか言え!割烹着着てやや子のガラガラ玩具やら庭掃きの箒やらを持って走り回ってるお前さんらとそんな非道な事仕事にして請け負ってる連中に一体どんな繋がりだの接点だのがあるってんだ!腹痛ぇわぁ!!やべえなその客!!」

ぶわっはっはと。心底面白おかしいといった様子で目尻に涙を浮かべながら店主が高らかに笑い声を上げた。その笑い声の大きさからも、彼がもう結構な歳だという事は微塵も感じられない。見た目に反して本当に元気な爺様だ。

「だろ?本気何言ってんだこのお人って思ってよ。妄想爆発してんだよなぁ……向こうさんからしたら単なる勘違いなのかもしれねぇがそんな物騒な事店ん中で言われたこっちの身にもなれっての。変な噂立ったらどうしてくれんだ…」

「客商売にはあらぬ噂は命取りだってぇのになぁ。お前さんの所は特にさ」

「本気その通りだぜ全く。こちとら信頼を盾に商売してるってのにさ。変な噂なんか流れちまったらマジで店畳む覚悟しなきゃなんねぇ」

「お前さんらに店を畳まれちゃ困るお人達もいっぱい居るだろ。ふーむ……何処で何を勘違いしたのかは知らんがえらく迷惑な客だ……よし!」

そして店主は、キリリと目に力を込めて真っ直ぐに里衆を見た。

「何でも屋さん、もしまたそんな変な客が来たらすぐに俺の店に来て俺に声掛けな。したら速攻で走ってってそいつにガツンときっつく文句言ってやるよ!大丈夫だ任せとけ!客商売に人生捧げて何十年もずっと一筋にやって来てんだ、変な客の懲らしめ方ならもう朝飯前よ。二度と敷居跨ぎたくなくなるようにしてやる!」

「………おやっさん……」

茶屋の店主の頼りになる言葉にしっとりと感動の空気を出した里衆へと、店主はにっこりと微笑ましい目を向けた。

「お前さんらは売上げに関係ねぇってのに仕事が暇だからとか何とか言ってよく近所の俺らの手伝いとかもタダでしてくれるだろ?助かってんだよ皆。お前さんらの人となりはよーく分かってる。親切なお前さんらの評判をそんな物騒な噂で落としたくはねぇ。大丈夫だ俺に任せろ。伊達にこの場所に長く店構えてるわけじゃねぇんだ、この辺りの人間にゃ広く顔も利く。しょっちゅううちを利用してくれてる常連のお客だって居る。お前さんらの店に変な噂が立とうもんならとことん俺らが揉み消してやるよ。この道云十年の茶屋の店主舐めんじゃねぇや!」

にっかーと、そう言って明るく笑ってみせた茶屋の店主の、その笑顔は本当に曇りのないもので。

確固たる“信用”。築き上げて来た隣近所との確かな関係性。それは、この店の任に当たる里衆達が常にずっと意識して行ってきた努力の成果と賜物だ。

決して怪しまれず、周りに溶け込んで。人当たりの良い愉快なご近所さん————その姿を徹底して、こうやって近所からの信頼を勝ち得た。

…言ってまぁほぼほぼ、里衆達にとってはそれが“素”でもあるのだが。この辺りの土地柄は比較的里の空気感と何処か似ている所がある。“忍びとしての顔”さえ隠してしまえば、結構普段里で過ごしているまんまの感覚で何も問題ない部分が多々あるのだ。要するに“ノリが一緒”、と、言えば話は早いか…

何にせよ、決して怪しまれないように注意して過ごして来た期間、その成果。
里にとって仕事上絶対に必要不可欠な事であり、この店に任を置く里衆達の最重要且つ大切な任務であるこの事柄は、されどその全てが“計算”の上で成り立っているものという訳でもない。勿論計算して行われている部分もあるにはあるが。

……里衆達も、店のご近所であるこの辺りの人々の事は決して嫌いではないのだ。どちらかと言えば好きな部類で。

この茶屋の店主である旦那も、向かいの宿屋の女将も。間違いなく“良い人”の部類。
“外”の人間には決して心を許さない里衆でさえ、彼らに対しては結構砕けた心で接している。無論絶対に譲れない“壁”は保ち続けてはいるけれど。

「…………ありがとなおやっさん。恩に着るよ…」

……故に、その一言はすんなりと言葉に出た。

「なぁに感動した顔してやがんだ。お前さんらと俺らの仲じゃねぇか!困った時はお互い様。ご近所同士協力して助け合って商売してこうぜ、俺の腰がめげた時はまた例の按摩でもしてくれよ。気持ちいんだよなぁ何でも屋さんの按摩……俺の店のお客の間でもめちゃくちゃ人気なんだよ、疲れがパッと取れるってぇな!」

「おやっさんの茶と団子には敵わねぇわな。ありゃ至福の癒しだ」

「いっしし、嬉しい事言ってくれるなぁ。んじゃま、ぷらっと散歩行って気分転換して来なよ。引き止めて悪かったな。お前さんが居ない間の店の前は俺が見とくよ、お客が来たら散歩中だって事伝えて俺の店で待っててもらってもいいしな」

「あーそれは有り難ぇなぁ。んじゃささっと行って来るわ。すぐに戻るしな」

「おー行って来なぁ」

そうして今度こそ里衆は散歩という名目のその足を動かして歩き始めた。

町の大通りから、やがて、人の少ない裏道へ。そして完全に人気の無い事を確認した上で、一気に速さを上げて里へと向けて走り出す。











「…………一体何処から情報が漏れたんだよ。有り得ねぇだろ普通なら」

店の里衆からの報告を受け、直ぐに朔馬を呼び寄せた玄斎の部屋に張り詰めた空気が漂う。

「……風変わりな商いではあるからの、偏見と憶測で変に噂が立つ事もあろうが……此度はそれでは無かろう。確信があって足を運んだという話じゃ」

「…………」

側に控える右京もまた、普段通りの無表情の中に厳しい色を滲ませ思案していた。


一瞬訪れた沈黙。それぞれがそれぞれの頭の中だけで思慮を巡らせる中、ふと全員に過ったであろう…されど誰もが口に出し難い“見解”を、真っ先に。朔馬が口にした。


「…………、まさかとは思うケド……漏れたんじゃなく“漏らした”んじゃねぇだろうな?誰かが故意に」

「………————」

「………その可能性が捨て切れん。無いとは思いたい所ではあるが……しかし……それが事実なら————」




……普通なら、漏れる筈の無い事実。里の表と裏の仕事は、情報こそ共有しているものの完全に別枠の代物であり関係性が露見する様な事は一切無い。

偶然にも表と裏両方を利用した事のある者でさえ、その大元団体が同一のものであるなどといった事は夢にも思わないだろう。そのくらい、里は表と裏で完全にその色を変えている。

にも関わらず、何故そんな事実が漏洩したのか。
“噂”としてならまだしも、確信を持たせる程にれっきとした“情報”として——————



「…………一体誰だ、“裏切り者”は」

「………………。」

「……その男を追いかけておる衆の報告を聞くのも先決じゃの。その男が何者なのか、を————」







——————裏切り者は、誰だ?


何が目的か。


真実は、まだ見えない。








ーーーーーーーーーーーーーー
………え?続き?無いです(きぱ)

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いやほんと……これがどう話に広がってくかとかほんと一切考えてないってゆーかなんかほんとふと過ぎったから書き殴っただけなので……伏線とかも関係なしにあんま考えないで書いてるしそもそも本当に誰かが情報漏らした……のは、まぁ確定ですわな。だってそれが書きたかっただけだしwwwなんかこう…そーゆーのが書きたくなったwwwただ多分その“誰か”も裏切ったとかいうわけじゃなくてそれを一つの“手段”として行ったというか?敵を騙すには先ず味方から〜的な……ラストには大どんでん返しで裏切り者=完全に味方、的な……なんかそういう、ミステリーチックなの書きたくなっただけよアイデアとか無いよお話すら皆無よ誰が情報漏らしたのかも知らんwww勝手なイメージ呉葉とかwwwwww(本人に殺されそう…)
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