徒然会話・小話(鬼灯学園パロ)

□それぞれの準備期間
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“此処がそうか” と。
無事目的地へと辿り着いた事を確認し、朔馬は麓からゆるゆると結構な距離を走らせて来た車を停止させて車から降りた。

麓にある街の賑わいなど全く届かない静かな山中に、バタンッと車の扉の閉まる音が響く。
見上げる先の目的地———目の前には大きく立派な、けれども圧迫感のないセンスの良い黒い格子門がそびえ立っている。まるで、どこかの西洋の城のような門構えだ。

更に奥へと続く敷地内の地面は石畳で綺麗に整備されており、この先の道を行こうとする者の道筋を分かりやすく案内してくれている…が。
軽く曲がり坂になっている事もあり、門によって隔てられた此処からは周りに生える木々が見えるだけで奥にある光景は窺い知れない。ぱっと見、その先には何も無いようにさえ見える。

(………想像してたよりもかなり広ぇな…この敷地。一体どんだけあんの…)

そう思いながらすっと横へと流した視線。
門の周りには、ぐるりと塀…ではなくて、鬱蒼と茂る立派な木々が備えられてはいない塀の代わりを担うようにして生え並びそのまま敷地外の森へと繋がっている。
一体何処までがこの施設の所有地なんだろうか…?門以外区切りの無いその場所に、そんな事を思ってしまうのも無理からぬ事だ。

深い山中に佇むこの場所は、恐らくは上から見れば大きく切り拓かれたような姿をしている…の、だろうが。
此処から色々と見ていると、まるで山の中にひっそりと溶け込んで隠れている場所かの様にも見えてくる。一見すると普通の施設の入り口、なのに…普通であって、どこか普通ではない。そんな、何とも言いようのない不思議な感覚をこの場所には感じた。

事前にもう耳にしているこの施設の “特色” がそうさせるのかもしれない。
再び、朔馬は正面へと視線を戻した。



「……………………」



“私立 氶華(じょうか)学園”



門を支えている白い石の柱、そこに掲げられている、同じく白の彫刻プレートに刻まれたその文字———

この施設の名前を、朔馬はじっと、真っ直ぐに視界へと映した。



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