短編まどか☆マギカ

□私の心に居続けるあの子
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そこはまるで絵本のような所だった。花が動物が絵のようになっていてそれが動く。とてもファンタジックな世界に見えた。

「ティロ・フィナーレ!」

しかしそこは絵本のような綺麗なところではない。辺り一面が暗い夜の森のようで花が動物が怪しく笑っている。そんな不気味な場所に一人の女の子がいた。その子は手にはマスカット銃を構えている。両サイドの髪がねじれているようなドリルのようになっているのが特徴的だった。一見優しそうなお姉さんタイプの女の子は手に持つマスカット銃で目の前にいる強大な花を撃ち落とす。

「これで終わりよティロ・フィナーレ」

ティロ・フィナーレとは彼女が決めたある種の決め台詞である。決め台詞と共にマスカット銃から弾が発射され巨大な花を撃ちぬく。悲鳴をあげて散って行くところを女の子は見届けてからマスカット銃を下ろす。
女の子の名前は巴マミ中学三年生である。そしてマミがやっていたことは魔女退治である。
マミには言えないことがある。それは彼女が魔法少女であるということである。マミは小さいころ事故で生死を彷徨ったことがある。そんな中ある生き物が魔法少女になる代わりに願い事を叶えてあげると持ちかけてきた。マミはそれを信じて命を助けてもらう代わりに魔法少女になったのだった。

巨大な花を倒すと一瞬にして世界が変わったように景色が変わる。先ほどまで森の中いたのが
今ではただの住宅街に位置するコンビニの前にマミはいた。
魔女は結界を張る。魔法少女はその中に入って魔女を倒すことが目的である。結界が作られていたコンビニの壁には小さな穴ができていた。

「お仕事完了ね」

一人で納得してマミはそのコンビニから離れて自分の家へと向かった。空はオレンジ色に焼けていて幻想的な夕陽が美しさをより一層引きだしていた。
時間も時間なのかマミは帰り道を歩いていると同じように中学校の制服を着た子たちとすれ違う。仲良く会話して楽しそうな表情を見るとマミは少し寂しくなる。
魔法少女になって魔女を倒すということはそれだけ時間と魔力いわゆる労力を使う。そのため
マミは魔女を倒して家に帰るとご飯も満足に作らず寝てしまうこともある。そんな日々を過ごす上でマミは友達と呼べる子がいない。帰り道を一緒に歩きながら話したり家に帰る前にカラオケに寄ったりして遊ぶこともない。ただただ学校と家を往復するだけの日々を過ごしていた。確かに魔女退治が毎日あるわけではない。それでもなければなければで魔女の結界が出来そうになるところを探したりしなければならない。だから自由に遊べる時間などほとんどなかった。
マミの住む家はマンションだった。何階かエレベーターを使って自分の表札のあるところまで来る。カギを取り出してドアを開けてマミは部屋へと入って行った。

「ただいま」

返ってくる返事がない。決してマミの声が小さいわけでもない。そこには誰もいないのだ。両親はマミが魔法少女になると決めた事故で亡くなってしまった。親戚も遠い人たちばかりで自分が死んだら発見されるのはいつになるだろうと思うくらいの存在だった。

「ただいまー宮子良い子にしていた?」

廊下を通りマミはリビングに繋がるドアを開けながら言う。もちろんリビングに宮子と呼ばれる子はいない。ソファと四角いテーブル入ってすぐ隣に台所があるだけ。階が少し高いため夕陽が良く入ってくる。
誰もいない。しかし巴マミには見えていた。そこにいる女の子が自分と同じくらいの背丈で満面の笑みをつくる女の子がそこにはいた。
マミはカバンをソファに置いて座る。四角いテーブルの上に一冊のノートが置かれている。それには日記のように宮子という女の子と遊んだことが書かれている。
マミは自分でも分かっているが見えない友達を作っていた。少しでも寂しさが和らぐように誰もいない部屋でマミは笑顔を作り見えない宮子と話す。

「お姉ちゃん明日は早く帰ってくるからね、ケーキも買ってきてあげる」

その宮子は巴宮子と言ってマミの妹という存在になっている。元気で食べることが大好きな宮子だからマミはそう言った。
会話なんてない。マミが言ったことすべてが空気に消える。でもマミには聞こえる。ケーキを買ってくると言って喜ぶ巴宮子の声が。
マミは楽しかった。巴宮子は彼女の唯一の親友でもあった。
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