短編まどか☆マギカ

□12月のアレ
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無駄な物がないリビングはまるでほむらの心の中を映し出すようだ。もう少しで1年が終わる。世の中は年を越すと言うことで慌ただしい。クリスマスがあってすぐに正月に入るのだ。ちなみにほむらはクリスマスでサンタクロースがやって来て子供たちにプレゼントを配るという話は信じていない。病院で暮らしていたことが長かったことが影響しているのかもしれない。
そして目の前にいる少女、佐倉杏子も同じだろう。
「それで、話って何さ」
カップめんを持って杏子はほむらに聞く。
「あなたも知っているはずよ、12月24日、25日は超ド級のイベントがあることを」
「ワルプルギスの夜以上のイベントって何だよ」
「クリスマスよ、正確には12月25日が正しい日なのだけれど日本はどちらかというと12月24日ね」
「ああ、知ってるよ街の中にでっかい木に装飾したり家でパーティーとかする富裕層限定のお祭りだろ」
杏子はつまらなさそうに言った。
「間違ってはいないわ」
「それがどうしたんだよ?あたしには関係ないね」
「そうかしら?24日は世間的にはお祭り。お祭りは人を開放的にするわ」
「それで?あまりあたしに関係のない話で読めないんだけど」
「美樹さやかとの距離を詰めるチャンスだと思うわ」
ほむらは杏子に言う。杏子は一瞬動きが止まってすぐにそっぽを向く。
「どうしてあたしがさやかと……」
「私は知っているわ。魔女と戦っている時に私達以上に美樹さやかを援護していたり、普段も行動を共にしている」
「そんなのあいつの戦い方が危なっかしいからであって、確かに日常的にさやかといる時間は多いけど」
否定的なことを杏子は言っているが顔が赤い。
「っていうか、ほむらはどうなんだよ。あんただってまどかって子が気になっているんだろ」
話を変えるように杏子はほむらに聞く。
「気になっているレベルではないわ、すでに彼女を愛しているわ」
「一方的に?」
杏子に言われてほむらは黙ってしまう。残念ながら杏子の言うとおりである。あの手この手を使ってまどかに振り向かせようとしているのだがいつも失敗に終わる。
「図星だな、確かにあたしもさやかのことをよく考えるよ。でもそれが恋心かどうかは分かんないだよ、だいたい恋なんてしてるヒマなかったし」
「でも今ならできる」
「そうだけどさ、何であたしを誘うんだ?一人でもいいような気がするんだけど」
ほむらはそれを聞いて確かにそうだと頷いてから付け足すように言う。
「まどかと二人になりたい。でもまどかはきっと美樹さやかや巴マミ、杏子も一緒がいいと言う。もしそんな時さやかと杏子に別の用事があれば諦めてくれるわ」
「そうだけど、巴マミはどうすんだ?」
杏子は細かくほむらに聞く。
「巴マミは中学三年生、受験があるから遊んでいられないわ」
「聞こえはいいけどほむらが言うと自分とまどかの間を邪魔するキャラみたいに聞こえる」
杏子はカップめんをテーブルに置くと腕組みをする。
「それでどうかしら?」
「まあ悪くないけどさ、でもあたしはまだあんたほどさやかに対して感情を抱いているとは思えないよ」
「それは本心かしら」
「たぶん」
そう言うが杏子の語気は弱い。ほむらは後ひと押しすれば折れると考えてポケットから一枚の写真を取り出して杏子の前に置く。
「何だよ?これ」
杏子はテーブルに置かれた写真を手に取り見る。
「上条恭介、あなたは学校に通っていないから知らないくて当然よ」
「ん?どっかで聞いたことがあるぞ?」
「名前は聞いたことがあると思うわ、美樹さやかからね」
そう言うと杏子は思い出したように手を叩く。
「ああ、さやかが魔法少女になる時に願い事の対象だっけ」
「そう、彼女の願いで上条恭介は手が治りヴァイオリンの演奏が出来るようになった」
「んでこのハンサムボーイがどうしたって」
「あなたも分かっているはずよ。美樹さやかは彼に対して恋心を抱いている。これは事実よ」
杏子はそれを聞いて黙ってしまう。
「ここ最近だけ考えればあなたは美樹さやかといる時間が長いわ、彼より圧倒的にね。だからこそチャンスなの。一応言っておくけど強制はしないわ、あなたの本当の気持ちで本当の行動で示すべきだから、もしそれを無視していいなら私だって魔法の力を使っているもの」
杏子はそれを聞いて写真から目を離してほむらを見る。
「ほむら……」
ほむらは杏子の持っている写真を取るとポケットにしまう。
「私はまどかといたい。でも言えないのよ、魔法少女になってどんなに強くなってもどんなに好きなように出来ても結局は昔の自分と同じ、自分を上手く出せないのよ。だからむしろ杏子が羨ましい。私はこんなイベントを利用しないと本当の気持ちすら伝えられないのよ」
そうほむらが言うと杏子はクスッと笑う。確かにおかしい話だとほむら自身も思う。いつも言いたいことをはっきり言っている人が何を言っているのだろうかと思われておかしくない。
「分かったよ。ほむらのためにあたしもさやかと二人になるよ。しょうがないなぁ」
笑うのやめて杏子はそう言った。
「杏子」
「いいか?ほむらのためだからな別にあたしが協力的なだけで決してさやかといられてラッキーなんて思ってないからな」
「分かったわ」
ほむらは感謝の意を込めて嬉しそうにそれだけ言った。
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