短編まどか☆マギカ

□そして集まる
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ほむらとまどかはあるマンションにやってきた。エレベーターで目的の場所まで上がる。チンとエレベーターの止まる音がして扉が開く。
「あれさやかちゃんと杏子ちゃんだよ」
まどかが二人を見て言うとさやかたちも気付いたのかこちらを見てさやかが同じような反応をする。
「まどかにほむら、二人もマミさんに」
さやかが聞くとまどかが頷く。
「わたしはよく分からないけどほむらちゃんが」
ほむらは昨日、あの杏子との話の後、みんなでパーティーをしようと言った。発端は杏子が美味いものが食べたいと言ったからである。ほむら自身もまどかと二人でいるのもいいが、まどかが以前、学校でみんなとパーティーなんか出来たらいいねと言っていたことを思い出し、喜んでももらえたらと思いマミに頼んだのである。
ほむらがマミの部屋のチャイムを鳴らすとマミの声が聞こえてきた。ほむらがチャイムに自分の名前を言うとマミが玄関にやってくる音が聞こえる。鍵を開けて扉が開く。エプロン姿のマミが姿を現した。
「やっと来たわね、もう準備は出来てるわよ」
マミは笑顔でみんなを迎える。ほむらたちが入ると部屋が飾り付けされている。
「みんなを呼んでパーティーでもって暁美さんが」
「まどかがみんなでやりたいって前に言ってたから」
「ありがとう、マミさん、ほむらちゃん」
ほむらは少し嬉しそうに頷く。すると杏子がほむらに小さい声で言う。
「マミは受験生って言ってたけどな」
「さっきも言ったでしょまどかのためよ」
「素直じゃないねぇ」
リビングに入るとクリスマスツリー、テーブルには豪華な食事の数々が並んでいた。
「おい、これは何だ天国か」
杏子が今にも食いつきそうな勢いで食べ物を見る。
「みんなのために腕によりをかけて作ったわ、たくさん食べてね」
こうしてマミ宅でクリスマスパーティーが始まった。

「まどかこれ、おいしいわ」
「うん、こっちもおいしい」
何気ない会話だったがほむらは一言一言が楽しかった。それを見ていたさやかが。
「何か、ほむら変わった?」
「さやかも感じるか、まるで別人みたいだ」
杏子も続いて言う。
「そうかしら、私は至って普通よ」
「いや、何かが違う。いつものクールな感じがない」
「そう簡単に言えば、男子もビビる強烈な威圧感がない」
「まるでその言い方、わたしがいじめるのが好きみたいに聞こえるけど」
それを聞いてまどかはクスッと笑う。
「ほむらちゃん、笑うととても可愛いんだよ」
まどかが二人に言うとさっきのまどかと同じで驚いた反応をする。
「まどか、それは秘密だって」
「うん、他の子には内緒だよね」
それを聞いてさやかと杏子は顔を見合わせる。
「ほむらの笑顔ってどんなだよ」
「知らないよ、きっとマミさんの家にやってくるまでにまどかの中でほむらの何かが再構成されたんだよ、きっとあたしや杏子が知らないほむらの」
それを聞いてほむらは軽くため息をついてひどい言われようだと思った。
「それにしてもやっぱマミの作った料理は美味いな」
「ありがとう、佐倉さん」
「でもさマミはこんなにおいしい料理ができるのに太らないんだな」
「ちょっと杏子失礼でしょ」
「だってそうだろこんなに美味かったらついついってことあるだろ」
「大丈夫よちゃんと制限はかけてるから」
微笑みながらマミは言う。
「でも制限かけないところもあるけどな」
「こら、杏子」
「もう、佐倉さんったら」
これも軽く笑ってマミは言う。
「逆にほむらは」
「……何かしら」
キッとほむらは杏子を睨みつける。以前キュウべえを睨んでいたあの怒りを含んだ表情だった。
杏子は命の危機を感じたので言うのをやめた。
「い、いや何でもない」
「そう、言葉には気をつけなさい」
たくさんあった料理もほとんどなくなった(大半は杏子が食べた)。マミが紅茶と一緒に持ってきたのは食後のデザートだった。マミお手製のケーキシフォンケーキだ。
「マミさんって何でもできるよね、本当に尊敬しちゃいます」
さやかがケーキを見ながらマミに言う。
「ありがとう、じゃあ切るから待っててね」
「マミ、6等分に切ってあたしに二つ」
「駄目よ、ちゃんと5等分」
「5等分のケーキってどれくらいの大きさかな?」
まどかが素朴な疑問を言う。
「そう言えば前にテレビで7等分のケーキをやってたね」
さやかが言う。
「やっぱここは6等分に」
「ちゃんと測って切るからね」
そう言って細かくメジャーでマミは測ってみんなが均等になるように切った。
「そういえば今日、ほむらちゃんと願い事をしたんです」
まどかがマミにケーキを食べながら言った。
「あら、どこで」
「街中の大広場にクリスマスツリーがあるじゃないですか、あそこです」
「知ってる、あそこでカップルが願うと願いが叶うって」
マミは紅茶を一口飲んでから答える。
「それ、あたしも知ってます、結構ロマンチックですよね」
さやかもそれに答える。
「でもさ、まどかとほむらはカップルじゃないだろ」
「あら知らないの、今や見滝原ではまどほむは有名よ」
「無理矢理だな」
杏子はケーキを食べて終わった皿をテーブルに置く。そんな楽しいパーティーは夜遅くまで続いた。
「でも、願い事かあたしならたくさん美味いものを食べたいって願うな」
杏子が言うと隣のさやかが笑って。
「ホント、杏子って花より団子だよね」
「花は見ても腹は膨らまないからな」
「風情がないわね」
ほむらがぽつりと言う。
「でも杏子ちゃんらしくていいね」
「それもそうね」
まどかの言い分にほむらは同意する。
「でも素敵な彼氏は欲しいわね」
とマミが一言言ってから。
「魔法少女だから無理だけど」
と付けたした。
「なら、魔法少女同士でいいじゃん、マミがいてくれたらご飯は心配しなくて済むから」
「杏子、あんたねぇ」
「さやかでもいいけど……料理が」
バカにされたような言い方にさやかはムッとする。
「なによ、杏子はお湯も湧かせるか怪しいのに」
「そんなの魔法の力でちょちょいと」
「何でもかんでも魔法に頼るのあたしいけないと思うけど?」
二人が言い合っている前でまどかとほむらは何も言わず見ていた。いつもの光景だなとほむらは思った。
「はいはい、二人ともそこまで」
マミが止めるのも変わらない。魔法少女になっていろんなものを失ったけどこれだけは失いたくないとほむらは心の奥から感じた。
「そう言えば、さっきの花火みたいのは何だったのかな?あたしと杏子は気付いたけど周りの人は気付いてなかったよね」
「そう言えば、花火が上がったのに静かだったね」
さやかとまどかが言う。ほむらと杏子は特に疑問を示さなかった。
「あれは、巴マミのアレよ」
「そうそう、マミの」
さやかの疑問にほむらが答える。アレを言うのは少し恥ずかしい。杏子もほむらの言ったことに頷いて詳しくは言わない。
「アレって、なに」
「本人に聞いて」
ほむらにそう促されたさやかはマミに聞く。
「あれはティロ・フィナーレでね」
とマミが得意げにマスカット銃を天井に向けて打つ格好をする。
「ああ、なるほど、ティロフィナーレで打ち上げたんですね」
さやかが納得する。
(しかし、アレをよく平気に言えるものね、それにわざわざ技名で会話する必要性があるの?)
ほむらはマミを見てそう思う。一番大人な雰囲気があるだけにほむらには理解できない。
「マミって変な名前付けるよな」
そこに一番子供っぽい杏子がまったく空気の読めていない感じで言う。ほむらもそう思っているが言わない。
「あら?そうかっこいいと思うけど?」
「かっこいいって、いちいち魔女倒すのに必要か」
「ええ、トドメ刺すときの決め台詞は必要よ」
「そうですよねマミさん。爽快感があるっていうか」
「美樹さんは分かるのね」
さやかがマミの言っていることに頷く。
「佐倉さん付けたら?」
「恥ずかしいじゃんか、さやかは言うのか?」
「あたしは、付けたいけど思いつかないんだよね」
「まどかとほむらは?」
杏子が二人を見て聞く。まどかは微妙な笑みを浮かべてほむらを見る。ほむらはため息つく。
「まどかは弓矢でも、私は銃器、ロケットランチャー、手榴弾にタンクローリーに戦車などなどすでに名前が付いているわ」
「それもそうか、まどかは弓放つだけだし、つける必要ないか」
「ちょっと杏子、まるでまどかが特徴ないみたいに言わないで」
杏子の言ったことにほむらが反論する。
「でも……」
「でももないわ、あなたこそ槍振りまわしているだけじゃない」
「ほむらちゃん、そんなこと言ったら、爆弾投げているだけって言われるよ」
「そうだよ」
まどかの言ったことに乗っかって杏子がまるでそれほど変わらないじゃないかと笑みを浮かべながら言う。
「爆弾をつくるのにどれだけ大変か知ってるの?」
「普通作ったら犯罪だからな」
「爆破させたあとの後始末だってやらないといけないのよ。銃だって不法輸入されているとはいえ、製造番号から辿られるとやっかいなの」
「不法輸入の物使ったら余計にまずいだろ」
杏子がほむらに真面目な顔で言う。確かにそうねとほむらもそれに頷く。するとマミが何かに納得したように口を出す。
「そうね、一般人に見られては困るものね」
「魔法少女の定めですね」
まどかがポツリと言う。架空の世界も現実の世界も同じだとその場にいた皆が感じて黙ってしまう。魔法少女は知られてはいけないもの。誰かが言っていたクラスのみんなには内緒だよ。つまりそういうことである。
「それで技名の話に戻るけどさ、結局マミさん限定の話なんだね」
さやかがやっと本来の話題に戻して会話を再開させる。
「そういや、さやかもあるじゃないか」
また杏子が話を変えてしまうのではとほむらは思いつつ黙っていた。
「あたし?」
「自分の傷を治す時に魔方陣が展開するじゃん、アレ」
「あれは回復系だよ」
「マミ、あれに名前を付けるとしたら?」
杏子がマミに聞く。マミが少しが目を閉じて考える。ほむらはそんな真剣に考えることだろうかと思う。
さやかは魔法少女になる時に癒しの力というスキルと契約している。そのため全治数カ月の怪我がすぐに治るようにできている。
とはいえ限度はある。
マミが目を開けてさやかの方を見て言う。どうやら思いついたらしい。
「そうね、守護〇陣は」
「ダメ、ゲームからはダメ」
こんなことだろうとほむらは思った。ティロ・フィナーレはどこから取ってきたかは知らない。もしオリジナルならマミの想像力はすごいものだと思う。
「そう?いいと思うけど」
「ダメです、絶対に」
「さやか、次魔女と戦う時言えよ」
杏子がおもしろそうに言う。さやかが顔を赤くして拒否している。
「まどか、何もないのが一番ね」
「そう……だね」
からかわれているさやかが頭を抱えて困惑している。このままではいつぞやの狂戦士さやかちゃんになってしまうと思ってほむらは止めようと思った。
「やめなさい、あまりの恥ずかしさにさやかのソウルジェムが汚れるわ」
「ちぇ、面白かったのに」
やっと落ち着いたようで妙な雰囲気を脱した。ほむらは思う。マミは特別な魔法少女なのだ。
「クリスマスの日がこんなに楽しいのは初めて」
マミが感情のこもった声で言う。ほむらはそれを聞いて理解する。マミは今まで魔法少女として戦っていて友達もいなかった。今まではクリスマスも魔女退治に勤しんでいたのだろう。
「わたしもほむらちゃんやマミさんたちとこんなパーティーが出来て楽しいです」
「あたしも」
「そうだな、こんな風に遊んでいられることもあまりないしな」
各自このパーティーの感想を漏らす。まどかがほむらの方を見ている。ほむらはどうしたのかと聞く。
「ほむらちゃんは?」
「そんなの決まっているわ」
楽しいに決まっている。皆といるこの空気がとても温かくて安心できて何より、普通の女の子ようで嬉しい。
「さあ、次は何を話そうかしら」
巴マミの部屋は夜遅くになっても灯りが消えることはなかった。
聖なる夜のパーティーはまだまだ終わらない。
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