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□近くて 遠い
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小さい頃
大きくなったら、星に手が届く。
と思っていた
天できらきら、と輝く星が欲しくて、
それを掴もうとして、天に精一杯手を伸ばしたけど
全く手が届かなかった
その時、僕は自分が小さいから。と思っていたような気がする
だから、早く星に手が届くように、大きくなりたい。と願ったはずだ
少しずつ、年を重ねて
少しずつ、心も体も大きくなって
そして、僕は気づいてしまった
いくら大きくなっても、あの星には手が届かないと云うことを―
そうして、僕は幼い頃に見た夢を一つ失った
他にも
沢山の夢を失いながら大きくなって
そうして、
沢山の『何か』を捨ててしまった先にあるものが『大人』と呼ばれる存在になることなんだろう
そう、僕は思っている
いつも「大人っぽいね」とか「しっかりしてるね」とか言われている僕は
きっと、同年代の他の子たちより早く、『何か』を捨て始めたのだろう
別に、そのことに関して、僕は何も思っていない
両親ともに命を預かる仕事をしているのだ
それなのに、一人息子である僕が、両親の手を煩わせるわけにはいかない
だから、いつまでも子供らしく『夢』を見ているわけにはいかなかった
…けれど。
時々――――
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