聖川ママお手製のカレーのおすそわけが来たようです。 会話のみ。 音也「ねえねえトキヤ!このマサのカレーやっばい!超おいしい!トキヤも食べる?」 トキヤ「結構です」 音也「えーいらないの!?おいしいのに…(もぐもぐ)んー……どうしよ、ほっぺ落ちるおいしすぎこれ」 トキヤ「……」 音也「くーっ、この舌にピリってくる辛さ堪んない! すっげー幸せ。生きててよかったー!マサありがとう!好き!」 トキヤ「…………音也、」 音也「もう俺死んでも……ん? なーにトキヤ」 トキヤ「……一口だけ食べます」 音也「ん? ほほーう、さすがのトキヤも聖川シェフのカレーの誘惑には勝てなかったか」 トキヤ「ひ、一口だけですよ!目の前であなたがあまりにも美味しそうに食べるのが悪いんです!」 音也「なーにトキヤ。もしかしてマサにやきもち? 好きって言ったから?」 トキヤ「……違います。 まったくあなたはすぐそうやって人を」 音也「はいはい怒らない怒らない。眉間の皺増えちゃうよ?」 トキヤ「……誰のせいだと思って」 音也「じゃあトキヤ、あーん!」 トキヤ「は?」 音也「あーん!」 トキヤ「しませんよ」 音也「お願いトキヤぁ、あーんして?」 トキヤ「……可愛く言っても無駄です」 音也「そっか……トキヤは俺のことが嫌いだったんだね、そっかぁ……うん。さみしいけどそれじゃ仕方ないよね…… 今までずっと同じ部屋の仲でようやく解りあえてきたと思ってたのに……。トキヤのこと大好きな親友って思ってたのは俺だけだったんだね……うぅ、およよよよよ」 トキヤ「……意味がわかりません、何を言ってるんですあなtむぐっ!?」 音也「どうどう?おいしいでしょ?」 トキヤ「……っはぁ、何やってるんですあなたは!人の口にいきなりスプーンを突っ込むなんて非常識にも程があるでしょう!」 音也「うう、ごめんトキヤ……。やっぱ俺にこんなことされるのやだったよね……」 トキヤ「な、いえそういうことでは、」 音也「あはは、冗談だってば。無理に食べさせちゃってごめんごめん。だけどあーんしてくれないトキヤが悪いんだよ〜だ!」 トキヤ「はぁ……まったく。あなたって人は本当に……。 しかし、本当に聖川さんは優れた料理の腕を持っているんですね。 コクの深みを併せ持ったまろやかなルーの中に、さりげなく、かつ鋭くピリッと唐辛子のアクセントを利かせるこのテクニック……一般人の比じゃありません。 いえ、むしろ一流レストランで出てきても不思議ではないレベルでしょうね、恐ろしい……。 それはそうと、この量じゃあなた一人では食べ切れないでしょう? 聖川さんのご厚意を無駄にするのも褒められたことではないですし、私もいただきます」 音也「え、食べれ」 トキヤ「あなたは普段から食べすぎなんです。いいから皿を貸しなさい」 音也「…………」 トキヤ「残りは私が食べます」 音也「えぇー……まだお腹すいてるよぉ」 トキヤ「そうですか。……どうしてもというなら考えなくもないですが…… ……カレーぐらいなら」 音也「ほんと!? って……え? カレーなら今あるじゃん、マサのが」 トキヤ「ですからそれは私が食べますと言ってるでしょう」 音也「……ごめん、あんま意味がよく」 トキヤ「くどいですよ音也。とにかくカレーを作るので食べなさい。……っ、聖川さんに負けるわけには……。 ……ポークカレーならば文句はありませんね」 音也「……え、う、うん……? ……負け? ってかあれ、トキヤってチキンカレー派じゃなかった?」 トキヤ「あなたが食べたいのはポークカレーでしょう」 音也「…………」 トキヤ「……なんです」 音也「……。ううん、なんでもない!……あぁどうしようもうなにこれ嬉しすぎ!大好き大好きトキヤ! 世界一好きーっ!! 」 トキヤ「……っ!? な、っ、なんです急に……離れなさい。音也!」 音也「やだ」 トキヤ「……っ、子供じみた真似はやめなさい」 音也「ねえトキヤ。マサのカレーも、そりゃもうそこらへんのお店なんて比べものにならないぐらいすっごくおいしかったんだけどね? ……でも世界で一番大好きなのは、やっぱりトキヤのポークカレーかな! なんちゃって、へへ」 トキヤ「……あなたには恥ずかしげという言葉はないんですか? 少し待ってなさい、準備しますから」 音也「ふふ。はーい!じゃあその間に俺はマサのカレーを」 トキヤ「!! 駄目です!そのカレーを食べてはいけませんよ音也!」 音也「……トキヤやっぱマサに妬いてるよね?」 〜〜〜〜〜〜 その後。 音也「!なんか今日のカレーいつもと違う……あ、美味しいって意味だよ!や、もちろんいつものも美味しいんだけどね! 今日はなんか隠し味とか入れたの?」 トキヤ「隠し味ですか……そうですね」 強いて言うなら。 聖川さんへのつまらない嫉妬、といったところでしょうか。 END →あとがき |