*うたプリ留置場*

□一目惚れ
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JOKER TRAP台本トキヤの書き込みより。
一目惚れという事態に対しての調査&研究とか書いてあったので何それって話。

会話のみ。


トキヤ「一目惚れ、ですか……相手の素性も知らずに好意を抱くなど、何とも危機感のない女性ですねこの人は。私には理解できかねます。ですが、私は一目惚れされた男という役を演じなければならない以上、この現象を理解する必要が……。
……いえ、頭では理解しているんです。ただ……役に入り込むとなるとやはり感覚的な面での、」

レン「おや、どうしたんだいイッチー。眉間に皺なんか寄せちゃって、何か考え事かい。台本を握りしめてるってことは……さては今度の公演のことでお悩みのようだね。当たり?」

トキヤ「……勝手に人の心理を分析しないで頂けますか、レン」

レン「てことは当たりだ。よし、このオレが悩めるイッチーの相談相手になってあげよう。ひとりで抱え込むのはイッチーの悪い癖だよ、たまには誰かを頼ることも必要さ。
……オレとイッチーは同じチームなんだし、ね」

トキヤ「……っ、レン、耳元で囁かないで下さい……そうですね、不本意ですが、この場合相談相手というならあなたが適任かもしれません」

レン「ふーん……オレが適任、ねぇ。
……なるほど、イッチーの愛を受ける幸せなレディはどこにいるんだい」

トキヤ「はぁ!?……違います、私の役が一目惚れされた男という設定なので色事に精通しているあなたからならば何か参考として得られるものがあるかと思っただけです。勝手に早とちりしないで下さい、まったく」

レン「なんだ、愛の伝道師はお呼びじゃないのか。てっきりイッチーが女優の誰かに恋してしまったのかと思って驚いたよ。なるほどね、にしても一目惚れ……か。
……そうだね、ちょうどオレがイッチーに抱いたみたいな感覚かな」


トキヤ「…………は、はぁ!?な、レ、レンあなた今なんて」

レン「イッチーを一目見たとき感じたんだ。身体の奥から突き上げる、どうしようもなく抑え難い……熱い、衝動をね」

トキヤ「……レン、あなた自分が何を言っているかわかってるんですか」

レン「このクールな仮面の下に眠っている、激しい炎の種……オレの手で火をつけて、熱く、溶けるまで燃やしたらどうなるだろう?きっと凄いことになるんだろうね、そう思うと……胸が疼いて、どうにも我慢できなかったよ」

トキヤ「…………っ」

レン「オレの手で、キミを熱く溶かしたい。
目が合った瞬間、胸が激しく掻き乱されたよ」

トキヤ「…………、っ」

レン「オレは一目惚れってそういうことを言うんだと思うけどね。
……おや、イッチーが真っ赤だ。ちょっと刺激が強すぎたかな」

トキヤ「…………」

レン「イッチー?」

トキヤ「…………レ、レン……っ」

レン「うん、オレだよ。なんだい」

トキヤ「……あ、あの。レンが、私のことを……その、そういう対象で、なんて……全く気付きませんでした。あの、私は……おそらくあなたの言う感情とは違う、んですが。
それでも……私にとって大切な存在には変わりありません。

……私も、好きです。あなたのことが」



レン「ーーーー…………へ?」

トキヤ「……………は?」

レン「……えーと」

トキヤ「……なんです」

レン「……あー…………はは、こりゃまいったね。
……あのねイッチー。確かにオレはイッチーに一目惚れだ。だけどそれは、恋とか愛とかっていうより……何だろう、もっと深いときめきなんだよ。からかったら面白そうだねこの子は、どんな顔をするんだろう?知りたい。見てみたい。……っていう。
イッチーのつんと澄ました顔が笑ったり怒ったり、くるくる変わる瞬間はオレも見ていて楽しいし、何よりその秘められた情熱が解き放たれる瞬間、あれは最高だね。こっちまで気持ち良くなっ……いててて、ちょっとイッチー手の甲つねらないでよ。オレの美しい手が傷付いたらレディ達が悲しむじゃないか」

トキヤ「知りません。前言撤回です。レンなんて嫌いです」

レン「ごめんってイッチー。謝るよ、ホントにわざとじゃないんだ。いやでも、まさかイッチーがそんな風に捉えるとは思っちゃいなかっ……いてて、だから痛いってば。そんな怖い顔してるとレディが一目惚れするどころか逃げ……あぁ!痛い!悪かったよ、オレが悪かった!好き!イッチー愛してる!これでいいかい!」

トキヤ「……真摯さが微塵も感じられません」

レン「はぁ……イッチーのワガママにも困り物だ」

トキヤ「心外です。誤解させたのはあなたでしょう」

レン「誤解……ねぇ。
……オーケー、一回しか言わないからよく聞いて。

…………愛してるよ、トキヤ」


トキヤ「……っ、トキ、……ーーっ!?」

レン「やれやれ、イッチーも初心だね。名前を呼んだだけでこの慌てようかい。……こっちが照れてしまうよ、まったく」

トキヤ「う、うるさいですよ!あなたがいきなり変な呼び方をするからでしょう……っ!」

レン「おや、お気に召さなかったようだ。イッチーの方がよかったかい」

トキヤ「イッチーでいいです。それでお願いします」

レン「あれほど嫌がっていたのに。
……オレに下の名前で呼ばれるの、そんなに嫌だった?」

トキヤ「嫌、なんて言ってないですよ。ただ……慣れないんです。何かくすぐったいというか……、っ、もう。私のことはどうだっていいでしょう。随分と無駄なことに時間を割いてしまいました。さあ、公演も間近ですし早く練習に取り掛かりますよ、レン」

レン「はいはい。ところで肝心の一目惚れについては何かわかったのかな」

トキヤ「ええ。一目惚れしたと言われても容易く信用してはいけないということがよくわかりました。またスパイとして忘れてはならない緊張感と猜疑心を改めて意識する良い機会にもなりました、感謝します」

レン「酷い言いようだね。まあ、イッチーの役作りに少しでも力添えできたなら嬉しいよ」

トキヤ「完璧に仕上げてみせますよ。公演、頑張りましょうね」

レン「そうだね。



……誰もが一目惚れするような、最高の舞台にしよう」



(しかし、信じてないって言われると……まいったね、

……ちょっと痛いよ、イッチー)





END

→あとがき




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