*うたプリ留置場*

□回転寿御曹司
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御曹司が回転寿司に行ったみたいです。

※会話のみ。



「好きに食え。……おれの奢りだ」

「いいのかい?嬉しいな、ありがとランちゃん。にしても奢りなんて一生ランちゃんの口から出るとは思わなかった言葉だね。驚いたよ」

「く、黒崎さん……!なけなしのお金を俺たちなどのために……!かたじけない……っ!何と有り難きお言葉!黒崎さんのご厚意、深く心に留めてご相伴に預からせて頂きます!そしてこのご恩は必ずや!聖川真斗、全身全霊、生涯を賭けてお返しする所存です!万が一今回の件で今後黒崎さんが金銭にお困りするようなことがあれば聖川財閥からの融資も」

「いらねえからてめぇはナチュラルに心抉ってくんな。あと重い」

「悪意がない分たちが悪いよね、なけなしのランちゃん」

「……てめぇら一旦帰るか?」

「ごめんごめん。冗談だってば」

「神宮寺、それが先輩に非を詫びる姿勢か。日頃から思っていたのだがお前はもう少し年配の者を敬う心をだな」

「…………おい、今……年配、って」

「オッケー聖川。その口を閉じよう」

「何だと。礼儀をわきまえろと注意をしただけだろう。見ろ、貴様のせいで黒崎さんが気を悪くなさってしまったではないか」

「……いや、むしろそれはお前の」

「黒崎さん。神宮寺の無礼、どうかお許し願います」

「ん、無礼とは聞き捨てならないね。このオレが礼儀を忘れた不粋な応対をしたことなんかないはずだ」

「貴様の礼儀とやらは女限定だろう。全く、度が過ぎた女好きにも困ったものだ」

「おっと聖川。勘違いされちゃ困るね、オレは節操なしの色好みじゃない。レディとひとりひとり丁重に向き合っているだけで女好き呼ばわりとはいささか狭量すぎやしないかい?」

「何を言う。毎日異なる女性を見境なく逢い引きに連れ出しているではないか」

「逢い引きに連れ出す?違うね。オレはレディの可愛い相談に乗っているだけだ。秘密の話をするのに人目がある場所じゃ都合が悪いだろう?残念ながらオレとレディはお前が思っているような浮かれた関係じゃないんでね」

「なるほどそれが口実か」

「だから違うって言っているだろう」

「ムキになるところが怪しいぞ神宮寺」

「いい加減その石頭どうにかしようね聖川」

「…………」

「…………」


「……てめぇら食わねぇなら帰れ」



「はっ、そうでした。申し訳ありません黒崎さん、俺としたことが。神宮寺の戯言に付き合っている場合ではなかったな」

「戯言、ねぇ……はぁ、まぁいいよもう。さて、オレもランちゃんのお金を、おっと間違えたお寿司を頂こうかな」

「……おう、丁度いいとこにうまそうなのが」

「ランちゃん待ってチョコレートケーキに手を伸ばさないで欲しいな!ああ待って待ってオレが悪かったよ!もうからかったりしない!!ごめんって!」

「ったく……黙ってさっさと食え」

「はいはい。わかったよ」

「……おお、生きの良さそうな鮪が」

「今通り過ぎていったよね。オレも惹かれてしまったよ。ん?へぇ……ハンバーグやカルビなんていうメニューもあるのかい。たまげたよ、何でもありなんだね。肉も揃えているなんて最近のお寿司屋はワンダフルだ」

「寿司屋でハンバーグとは子供のようだな神宮寺。……あっ」

「……人の食うもんにいちいちケチつけるんじゃねぇよ」

「ああぁあぁ俺は何たる失礼を……!!ももも申し訳ありません黒崎さん!!決して黒崎さんの召し上がるものに対して子供のようだなどと言ったわけでは!!」

「…………もうてめぇは黙って食ってろ真斗」

「……。聖川がごめんねランちゃん」

「てめぇのその目もなんかイラッとするな……マジでベラベラうるせぇっつってんだ、黙れ。とりあえず食え。その口に米詰めこんどきゃ多少はマシだろ」

「あああ本当にすみません黒崎さん……!くっ、もう顔が上げられない……っ!」

「よしよし聖川。その過剰な恐縮っぷりがランちゃんの傷をさらに深めてるってことにいい加減気付こうね。おや、美味しそうなオニオンサーモンだ」

「……どこだ。俺も鮭は頂きたいと思っている」

「今流れていったよ」

「む、そうか」

「おっと、これは見るからに絶品のホタテだね。艶めいた真珠のようだ」

「おお……見ろ神宮寺、あっちから立派な海老が来るぞ」

「わぉ。プリッとして新鮮そうだね」

「…………」

「…………」

「……ああ、俺の海老が流れていってしまった」

「残念だったね聖川。次回ってくるときにはもうなくなっている可能性が高いけどね」

「そ、そんな無念な……っ!」

「……おい、てめぇら」

「なんだいランちゃん」

「人の間を回されて雑菌がついたものは食えねぇとかボンボンみてぇなこと言ったら殴るぞ」

「へ?……いやいやいや。冗談はやめてよランちゃん、オレ達を何だと思っているのさ。まさかそんな箱入りのブルジョアじゃないよ。だよね聖川」

「うむ。そんな軟弱な胃腸ではバイキングにも行けぬな」

「だったらボケッと観察してないでさっさと取れ。それかこのボタンで店の人呼んで頼め」

「なるほど、このボタンとインターホンはそういうシステムだったのかい。レディがここに来てくれる手間を省けるってことか。ルームサービスってところかな?いやぁたまげたよ、素晴らしいアイデアだ。流石ランちゃんの行きつけのお店は違うね」

「……いや別に行きつけってわけじゃねぇよ。あと」

「それにしても本当に俺たちの知っている寿司屋とは何もかもが異なっているのだな。ベルトコンベアーで寿司を席まで運ぶなど今までの技術では到底考えられん。やはり時代の流れと共に寿司屋も進化してゆくのだな……お見それしました。流石は黒崎さんですね。最新鋭の機能が備わっているこの店に誰よりも早く目をつけるなどお見事の一言に尽きます」

「……いや、あのな、……どこから突っ込みゃいいんだ」



「よし聖川。あのボタンを押すんだ」

「俺がか!?神宮寺が押せば良いだろう」

「だって何かドキドキするじゃないかい」

「貴様は乙女か。いいか、ボタンに近いのは神宮寺、貴様だ。よってボタンを押すのは貴様の役目だ」

「とか言ってお前も緊張しているんだろう?だからって人に押し付けるのはよくないぜ、聖川」

「なっ、何を言う!貴様という奴はさっきからうじうじ女々しいぞ!腹を括ったらどうだ神宮寺!」

「はぁ、お前も男らしくないね。まったくこれだから真斗くんは」

「何だと?」

「……てめぇら黙って聞いてりゃぐちぐちぐちぐちうるせぇんだよ。あぁもういい!おれがボタンを押しゃいいんだろ……!レン、てめぇはインターホンに喋れ。んで真斗は寿司を取れ。いいな」

「ええっ、喋るのオレかい!?」

「……あぁ?なんか文句あんのか?」

「……いや、何でもないよ。オッケーランちゃん、準備完了だ」

「んな気張るもんでもねぇよ……んじゃ押すぞ」

"はい、お伺いします"

「……ええと、初めましてかな。こんにちはレディ。突然ごめんね。はは、ちょっと緊張するね。オレは神宮寺レン、」

「代われ真斗」

「ええっ、お、俺ですか!?」

「……頼むから普通にしてくれ」

「は、はい!不肖この聖川真斗、黒崎さんより直々承ったお役目精一杯努めさせて頂きます!」

「あー……。なんか心配だな……間違っても挨拶なんてすんじゃねぇぞ」

「了解しました。では参ります。……


……すまない。しばしの間この流れを止めては貰えないか」





「…………は?」




「ああ。そうだ。ベルトコンベアーだ。よろしく頼む。では」





「……何言ってんだてめぇ!!!?おい!?」

「ああっランちゃん気を付けてそんなに乗り出すとお茶がこぼれてしまうよ」

「すみません連れがふざけたことを!!今のは無しで!中トロと梅きゅう一つ!!」

「……お、俺は何か間違ったことを……?」

「いやぁ、ナイス聖川。ちょっと固かったけどいいんじゃないのかい?オレとしたことが緊張してしまって上手く話ができなかったものでね。助かったよ」

「い、いやだがしかし黒崎さんがすごい目でこちらを……」

「ん、ランちゃん?……やぁ、ランちゃんそんな恐い顔をしてどうしたんだい。あぁ……もしかしてさっきのかな?あれはちょっと緊張してしまっただけじゃないか。オレも聖川も初めてだったし許してよ、ね?お願い」

「…………」

「じ、神宮寺!そんな軽率な謝罪では許しを頂けるはずがなかろう!やはり貴様の謝り方には問題が」

「そうかい?丁寧に謝ったつもりだったんだけどな。ランちゃんごめんね、今度はちゃんと出来るように頑張るよ。あぁ、やっぱり最初の一言は失敗だったかな。姿が見えない初めてのレディだったから少しかしこまった態度のほうがいいかなと思ったんだけど。よそよそしさが裏目に出てしまったね」

「申し訳ありません黒崎さん……!今度はもう少し固くならずに話せるよう精進致します!くっ、俺としたことが……黒崎さんに恥をかかせてしまい恐縮の限り……っ!言葉遣いが場に合わないというのならば直しますのでご指導のほどよろしくお願いします!」

「…………」

「……どうすればよいのだ神宮寺、黒崎さんが本格的に機嫌を損ねてしまわれたぞ」

「オレに言われても。ごめんよランちゃん、お願いだから機嫌直して……ね?」

「ああもう気味わりぃ触んな!!!」

「おっ、ランちゃんが覚醒した」

「く、黒崎さん俺たちの非礼お許しを……っ!」



「……。てめぇら……やっぱり奢りは無しだ」



「えっ!どうしてだいランちゃん」

「な、何と……!?」




「ボンボン共に払う金はねぇんだよ!!!!」





END


〜〜〜〜〜


「……で言い訳は」

「言い訳?オレはいつもホテルでルームサービスを頼むときみたいにしただけさ。よろしくね、いつもありがとう、って挨拶をするのがマナーじゃないのかい?初めてのレディなら尚更だ。こっちから名乗るのなんて常識さ」

「ここは神宮寺財閥のお膝元じゃねぇよ」

「俺は回っているものに横から手を伸ばすのはいささか行儀がよくないかと思ったまでです。完全に停止してからでないと危ないではないですか。取るタイミングを外して寿司が落ちるようなことがあってはなりません」

「おう、親のツラが見てぇ」






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