リクエスト
□貴方の掌から伝わる確かな温度に安堵して
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「……たく、久しぶりに自由な生活に戻れて最初に出かける所が遊園地とはな。相変わらずガキだな、お前」
「べ、別に良いだろっ!ちょうど無料のチケット二枚貰ったのだからな。…それとも、他の人を誘えば良かったのか…?」
「アホ。そんな事したら仕置きじゃ済まさないぜ?スミ」
「……な、何でなのだ!?」
相変わらずの俺様な態度のキリヲに振り回されながらも、夕闇遊園地に到着した二人。
休日ともあり、人の数は多かった。
「……相変わらず凄い人だなぁ」
「迷子になるなよ、スミ」
「な、なる訳ないだろ!」
とは言え、あまりの人の数に、油断をしたら本当にはぐれそうだった。
(……そっか!今日なんかイベントあるとか言ってたな。だから更に人が多いんだ!)
まるで、お祭りのような騒ぎだ。
背後からやってくる人達に押され揉まれで、キリヲの姿が認識出来なくなってきたスミオ。
「……キ…っ…」
「……たく。やっぱり目が離せない奴だな」
ぐいっと。
キリヲはスミオの手を引いた。
そしてそのまま人が少ない場所までと移動する。
「……本当に迷子になりかける奴がいるか?」
「…………」
「……スミ?」
黙ったまま俯いているスミオに、どこか怪我でもしたのだろうかと顔を覗き込む。
「………キリの手…」
「……?」
「…温かいのだ。……変わらない…。3年前と」
「……スミ…」
「…帰ってきたんだなって。キリはここにいるんだ…」
歪んでしまった自分達の運命。
バラバラになってしまった絆。
でも、取り戻せた。
この掌を伝う、確かな温もりがその証拠。