リクエスト
□あなたの香りに包まれて
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「………ん?これは…」
タケマルと一緒に帰る約束をしていたスミオ。
しかしタケマルは担任に呼び出しを食らって職員室に向かった。
その間三年生の教室で彼を待つことにしたスミオだが、ふと緑色の物体が視界に入った。
「…これ、タケマルさんのコートなのだ」
手に取ってみると、それは彼の象徴(?)である緑のコート。
今でこそ顔を見せてくれるが、初めて会った頃はこのコートをずっと着ており、フードで顔すら隠していた事を思い出す。
恐らく、まだ自分達の事を信用していなかったのもあるのだろうけど。
「…でも、タケマルさんと言えばこのコートなのだ」
クスクスと笑いながらコートを手に取ってみる。
(……おっきい、なぁ)
タケマルは長身だ。
その分、彼のコートは普通のサイズよりも大きくて、スミオが着てみるとまるで服に着せられている感じになってしまう。
「……へへっ、でも…タケマルさんに包まれてるみたいなのだ…」
彼のコートを羽織る。
肩幅は当然余るし、袖も長くて手が隠れてしまう。
しかし、コートから香る彼の匂いが、スミオの身体全体を包み込んでいた。