x.o.x.o

□なんかムカついた。
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「おはよう!一ノ瀬さん!!」

挨拶変わりに一度だけ頭を下げて教室に入った。朝から沢山の人に挨拶をされた。もちろん女子からは三人くらいしかしてもらえなかったけど…

「一ノ瀬さんって部活入らないの?」

「……運動苦手だから」

「ならさ、バスケ部のマネージャーやらない??」

「は?お前何言ってんだよ!バスケ部より野球部のマネージャーやろうよ!」

「いやいや、そこは…」

「ルールもわかんないし…やらない。」


「俺が教えるからさ!」

「とか言いながらお前変なこと考えてるだろ〜?」

肩に触れる男の手が気持ち悪い。私に触らないで、辞めて…っ


《俺が助けてやるよ》


そう言ってくれた彼は今いない。助けになんか現れない。なら……

「……私からいかなきゃ!」

男の手を振り払い教室を出ようとすると今度は違う男に腕を掴まれ寒気がぞわっとした。

「やめて」

再度手を振り払い今度こそ教室を飛び出る。
確か赤也はD組って言ってたから隣のクラス…!ってなんで皆追いかけてくるのよ!!


丁度D組の入り口に立っている赤也の後ろ姿を見つけて「助けて」って言おうとしたのにそればできなかった。


だって赤也はショートカットの女の人と抱き合っていたから。

「………ぁ…」

あれが噂のガールフレンドなの…かな。私が今赤也に助けを求めたらあんな幸せそうな彼女顔を曇らせてしまう。


助けてくれるって言ったのに。


遠慮したのは自分なのになんかムカついた。

ちょっとフリーズしかけたけどそんな余裕はない。私は赤也とは反対側へとまた走りだした。


「そんな逃げなくてもいいじゃん!」

「嫌だってば!!」

そうだ、職員室に逃げ込もう。そう思って私は階段へと急いだのだけれど階段間際で肩をグッと掴まれてしまった


「離してよ!」

「ちょっとくらい話して聞いてくれても…」

勢い良く男の手を肩から離そうとした時、私は階段間際にいたことを思い出したけど時すでに遅しってやつで、そのまま階段へとふわりと浮遊感を味わいながら落ちる感覚がした。

辺りから女子の悲鳴が聞こえてきてやっと
あ、私階段から落ちるんだってわかった。


「危ない!!」


激痛が襲うであろう体に力を入れた。しかし痛みは一向に現れず目をゆっくりとあけた


「…い…たくない…?」

「大丈夫か!?」


ーーーーーーーーーーーー


「きゃぁああ!!」


突如悲鳴が廊下に響き渡った。何事かと、無理やり抱きついてきた愛美をはがすと声の方へと俺は走り出した


「おいっ!何があったんだよ!?」

「い、今…E組の奴らが例の転校生を、お、お、追い回してて…階段から…お…ちた…!」

「柚子!!」

俺は例の転校生、柚子が落ちたであろう階段へと急いだのだけれど、そこに見えたのは真田副部長と抱き合う柚子の姿だった。

「愚か者が!!!女子生徒を追いかけるなど言語両断!!たるんどるぞ貴様等!!」

一瞬止まった思考が真田副部長の怒号によって動き始めた。
野郎共に追いかけられてここまで逃げてきて階段から落ちたのかよ!
一体なんなんだよこの状況は……!!

「野次馬は教室戻ろうぜ?」

とりあえず周りの人だかりを無くそうと声をかけながら真田副部長の元へと向かった。


俺が助けてやるよつったのになんで頼ってくんねぇんだよ…
俺そんなに頼りねぇかよ!!


なんでかわからないけど、ムカついた。



「大丈夫か?」

「だ、大丈夫で…す。ありがとうござい、ます…足が…す、竦んで…っ」

「もう大丈夫だから安心しろ。」


「真田副部長!柚子無事か!!」

「赤也か。お前の知り合いか?」

「あ、はい、俺の…俺…の……友達…ッス。」

「少し放心状態のようだ。保健室に連れてってやれ。俺は先程の愚か者共に言ってやらなければならないことがまだあるからな」

真田副部長が抱き寄せていた柚子を自分に抱き寄せると真田副部長はすぐにE組へと向かったようだ。



「…柚子…大丈夫か?」

「だ…いじょう…ぶだから……教室…戻っていいよ」

「一人じゃ立つこともできないのにか?」

「…っ…だって……赤也…」

「…とりあえず保健室いくぞ。」



自分に頼ってくれなかった事もむかついたけど、こんな状況でなんにも出来ない自分にもっとムカついた。
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