短編+番外編

□三日月
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「あ、翔ちゃん!見てください。今日は綺麗な三日月ですよぉ」

机に向かって課題をやっていた俺はいきなり大声をあげた那月に一瞬ビクついた。
那月を見ると窓の外を見て目をキラキラさせている。…ように見える。
なんとなしにそっちへ行って、俺も那月と同じように見上げてみる。

確かに綺麗だった。

今日は珍しく雲1つない空だったから、余計綺麗に見えた。

「ね、翔ちゃん。綺麗でしょう?」
「……あぁ」

なんか、嫌なこと全部忘れられる。
そんな魅惑が、あの月にはあった。

そうして二人で三日月を見上げること数十分。
扉をノックする音が聞こえた。
そういえばいくら外が暗いとはいえ、まだ18時前後だ。
誰かが来てもおかしくはない。

「どうぞ」

扉の外に向かって一言言うと、トキヤが入ってきた。

「あれぇ?一ノ瀬さん、どうかしたんですか?」
「えぇ、少し。翔に聞きたいことがありまして。…お邪魔、でしたか?」
「そんなことないですよー」

俺に?
俺なんかしたっけな。と今日を遡っていると思い出す。
そういやトキヤ、午後の授業、居なかった。
真面目なトキヤの事だ。ノートでも借りようとでも思ったのだろう。
レンがノートを取っているとは到底思えない。
案の定、トキヤの言葉はこうだった。

「翔。すみませんが今日の午後の授業、ノートとか取ってませんか?出来れば何をやったとか、教えていただければ良いのですが」

俺は机に移動して、広げていた教科書とノートを手に取りトキヤの方へ向かった。

「ここからここが今日やった範囲で、これ、来週までに創ってこい、だってさ」
「わかりました。少々お借りしても良いですか?」
「おう!」
「ありがとうございます」

俺の手からノートを取ると、トキヤは自室に戻っていった。

「翔ちゃんは、課題は良いんですか?」

さっきまで俺がやっていたことを思い出したんだろう。
心配そうな目で那月が俺を覗き込んでいた。

「ん?良いんだよ。どうせ来週までだからな」
「そうですか」

ニッ、と笑って答えれば納得したのか那月も笑って返した。

「んなことより飯食いに行こうぜ!」
「僕が作りますよ?」
「それだけは絶対にやめろ!!」

それから僅かな攻防戦があり、俺達は食堂へと足を向けた。


fin.


うたプリ初短編
トキヤさんは絡めやすいね…というか書きやすい
久し振りに綺麗な三日月に出会いまして衝動的に…

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