二人の協奏曲

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ゴールデンウィークも終わり、授業が再開した。

ゴールデンウィーク中は、見事に仕事三昧で、休みという休みではなかったような気もする。
お陰で寝不足気味で、ぼーっと授業を聞いていたら突然外が騒がしくなった。
また社長か何かやらかしたのかと思ったら、龍也さんが"後は自習だ"とか何とか言って、教室を出ていった。

「いきなりなんでしょう?」
『Aクラス特別授業だってさ』

あ、一十木と七海さんが二人三脚してる。
あの二人はパートナーだったんだね。

「…音也」

トキヤが呟く。
そういえば同室なんだっけ。

『気になる?』
「……そういうわけでは」
『嘘』
「……はぁ…。…秋音には敵いません」

気にしてなければそんなに彼の事を見ないだろうしね。
トキヤは読みにくいと見せ掛けて結構分かりやすかったりする。
親しい人間のみかもしれないけど。

「音也は私に無いものを持っている。それが何なのか、理解は出来ませんが気になるんです」
『へぇ…』

トキヤの歌には心がない。
龍也さんも言っていたが、上手いだけではこの世界は生き残れない。
HAYATOという殻を破りたくて入学した(らしい)筈なのに、それに捕らわれている。そんな気がする。

『…こういうのは本人が気付くしかないんだけどさ…』
「何か言いましたか?」

ボソリと呟いた筈の言葉が多少聞こえていたようで、俺は苦笑いで、なんでもない、と答えた。




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