二人の協奏曲
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※翔ルート軽いネタバレあり
今日は体育祭当日。
全員参加のクラス対抗戦だから、とかいう理由で翔と神宮寺が張り切っていた気がする。
薫に知られたら怒られそうだ。
トキヤは興味がないようで、本を持ち込んで木陰で読んでいる。
俺?俺はもちろん体育祭なんかに興味はないから那月の傍で作曲してる。
「アキちゃん、身体動かすの嫌いだからねぇ」
『何でわざわざ肌を焼かなきゃいけないんだよ。引きこもらせてよ』
「でも夏は好きだよね?」
『冬は寒いから』
那月に寄り掛かって、木の葉越しに空を見る。
嫌なくらい晴れた青空。
照りつける太陽は5月なのに暑かった。
「次は100m持久走だって」
那月がプログラムを見ながら言う。
…持久走?100mなのに?
「ウーロン茶を口に含んでほふく前進で進むんだって。途中で噴き出したら失格って書いてある」
オトくんがこれに出るんです、と那月が続けた。
…オトくん?
──…あぁ、一十木の事か。
そういえばトキヤもこれに出るんだっけ。
譜面から目を離してスタート地点を見ると、いつの間にかスタートしていたのか、ほふく前進をしている選手達が目に入った。
…うわぁ、シュールな光景だ。
トキヤがこんな競技に参加するとは思えなかったが、理由は大方、一十木が関連しているのだろう。
負けず嫌いだからな、トキヤ。
「オトくん頑張ってください!」
隣で那月が一十木を応援している。
気付けば失格していない人はトキヤと一十木だけだった。
そして社長が二人の前に現れて、服を脱いだ。
社長の腹に何か書かれているようで、それを見た二人は同時に噴き出す。
「"日本男児"って書かれてるね」
『"日本男児"って…』
おいおい。
結局100m持久走は全員失格となった。
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