二人の協奏曲
□10
1ページ/1ページ
『は?レコーディングテスト?』
社長に呼ばれ、学園長室を訪れると告げられた言葉。
「そうデス。秋音サンにはSクラスとAクラスの今のレベルを見て双方の課題曲の編曲を創って貰いマース」
『生徒の俺がですか』
「プロとしてのお仕事でーす」
確かに、確かにプロだけどさ。
現生徒に授業で使う課題曲を創らせるか?
普通ないよね?
困惑している俺をよそに、社長は言った。
「既に龍也サンには話をつけてありマース。思う存分、聴いてみてくだサーイ」
しかももう既に決定事項。
そうだった。この人に常識は通用しない。
『………分かりました』
俺は頷くしかなかった。
そしてレコーディングテスト当日。
神宮寺はもともと音楽の才能があるのか器用なだけか、特に何もなければ合格点になるだろう。
そう当たりをつけて、俺はレコーディングルームへと足を運ぶ。
『失礼します』
「あぁ、秋音か。社長から話は聞いてる。災難だな」
『そう思うんなら代わってください』
もともとは教師の仕事だろうが。
「断る。事務所きっての作曲家つったらやっぱお前だからな。諦めろ」
『これ以上何を諦めろと』
「それもそうか」
シャイニング事務所に入ったときから仕事に関しては社長の一存で決まるから自分の意見を通すことは既に諦めている。
それでも夢は諦めないけど。
「んじゃ、そろっと始めっか」
レコーディングテストが始まった。
.