二人の協奏曲

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『ねぇ、社長。再テストには行かなくて良いですよね?』

とりあえず創った曲を提出しに、後日、学園長室へ赴いた。

「ンー、つまらないデスねー。面白いものが見れると思いマスよー?」
『そうなんですか?でも正直興味はないです。パートナーである神宮寺は合格しましたし』
「…むむ、それなら仕方ないですネー」
『そういえばこんなんで良いですか』

五線譜を渡せば、社長は真剣な目で一通り目を通したあと、OKを出した。

「いいだろう。それでこそ、我がシャイニング事務所の作曲家だ」
『ありがとうございます』

それでは失礼します、と俺は学園長室を出た。

「秋音」

学園長室を出るとトキヤがいた。
大方歌について、意見でも求めに来たのだろうか。

「聞きたいことがあるんです。"心に響かない"と貴方は言った。貴方も、私の歌には"魂"が篭っていないと思うのですか?」

俺が歩き始めるとトキヤも着いてくる。

『魂っていうか…、なんていうかな。トキヤの歌は誰かに聴いて貰うために歌っているようには思えない。HAYATOはさ、ファンの為に歌っているだろ?だけどトキヤは"一ノ瀬トキヤ"として歌おうと必至になり過ぎて周りが見えていないような気がする』
「………貴方の創る曲に惹かれるのは貴方が誰かを想って書いているからですか」
『さあね。好みもあるんじゃないかな』

Aクラスの前で立ち止まる。

『トキヤは今、楽しい?』
「……は?」
『先に教室戻ってて良いよ。俺、那月に用があるから』

そういって困惑しているトキヤを尻目にAクラスの扉を開けた。


「あれ、秋音?どうしたの?」

Aクラスに入ると真っ先に気付いた一十木が話し掛けてきた。

『…那月に用があったんだけど…、居ないみたいだね』

教室内を見渡すがふわふわのミルクティー色の髪は見当たらない。
さてどうしよう。

「伝言できるなら俺が伝えておくけど?」
『いや、大した用じゃないんだ。また後で来るよ』
「そっか。…あ、この後時間あったりする?」
『いや、ちょっと忙しいかな』

那月が居ないんじゃ仕方ない。
諦めてレコーディングルームに隠るとしよう。
まだ終わっていない仕事がいくつかあるんだよなぁ…。
…その前に教室寄らないといけないけど。

その後、Aクラスを出て少しした後那月に会い、用事を済ませた。
ちなみに用事というのは正直那月ではなく砂月にあって、人気のないところに連れていって眼鏡外させて、いつだったかの砂月の書いた曲を使わせてもらえないかどうか、という許可を取ることだったりする。
二つ返事で許可がおりたけども。

そういえば再テストは一十木が勝ったらしい。…というのを那月から聞いた。



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