二人の協奏曲

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プール開きです。
俺は今、翔から全力で逃げています。
何故って?
翔が追いかけてくるからだよ!
…あれ、前にも同じようなことがあった気がする。

「だーかーら!何で逃げるんだよ!!」
『俺は水球対決のサポートなんて、しない!』
「理由になってねぇよ!」
『お前に捕まったら、嫌が応でもプールに、連れてくだろ、が』
「なんで嫌がるんだよ!」
『何で、お前、は、そんな走って、息切れ、一つ、ない、んだよ…』
「話、噛み合ってねぇ!」

この体力バカが。…いや、体力はそんな無かったか。
でも心臓病もってるくせに走りまわんじゃねぇ!
…俺が止まれば良いだけの話なんだがな。
翔がスピードをあげた。
当然、俺は捕まる。

「捕まえたぞ」
『………嫌だ』
「さぁ、行くか!」
『……嫌だって…、…っ痛!ひ、引っ張るな』

逃がさないとでもいうように強い力で腕を引かれる。
痛い。
俺、非力だからそんな力一杯引っ張らなくても逃げない…てか逃げれないから。
ずるずるとプールまで引っ張られる。
…見なければ良いんだ。見なければ…。
プールサイドまで来て、プールを見ないなんてあり得ないことだって分かってはいるけれど自分に言い聞かせる。

「秋音?」

下を向いて立ち止まった俺を心配してか翔が俺を覗き込む。
ああ、バカ。
お前が動いたらプールが見え…。

『……っ…』

…頭痛、耳鳴り。
血が下りるように引いていき、立っていられなくなる。

『……っぅ…ぁ…』

頭を抱えてしゃがみこむ。
意識が途絶える寸前感じたのは、誰かの温もりと那月の声。




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主人公くんは水がダメなんです

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