二人の協奏曲
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久々にレコーディングルームで神宮寺と二人、曲を作る。
神宮寺もそこまで積極的ではないみたいでちょくちょく女性とデートに行っている。
俺も仕事の片手間にやっているから文句は言わない。
もともと才能があるのか注文をつければすぐに対応するし半年という長い期間で作れるから焦ってはいない。
だけど、俺の作った曲を愛の無いまま歌われるのは気分が悪い。
『神宮寺の歌には歌に対する想いがないね』
思わず呟いた言葉に神宮寺が反応する。
「想い、ね。歌は歌だろ?」
『聴き手の心に響かないんだよ』
「…心、か」
残念だけど、と神宮寺は続ける。
「オレは昔から何一つ真剣にやったことなんかない。真面目にやれといわれてもそれはできない相談さ」
そう言って笑う彼をみて俺は笑みを浮かべる。
『真面目にやれ、なんて言わないよ。最初から期待していない上に俺も人の事言えないからね』
所詮は学校提出用。
確かにデビューを目指している人間にとってこの時期にペアで作る曲が大事になってくる。
だけどそれがどうした?
俺は既にシャイニング事務所の正所属の作曲家で神宮寺は多分デビューなんて考えていない。
「デビューしたいと思わないのかい?」
『どうだろう。少なくとも卒業オーディションを真面目に受ける気はないよ』
ふーん、と神宮寺は目を細める。
『神宮寺がオーディションで優勝する気があるなら本気を出すけど、別にそうでもないだろう?』
社長が決めたことだから何か意味はあるんだろうけど結局は歌い手の気持ち次第だよね。
『まぁ、この話はこれで終わり。せっかく一緒にやってるんだ。曲を作ろうか』
パンッと手を鳴らして気持ちを入れ換える。
神宮寺もそれに頷き、曲作りを始めた。
気が付けば日は落ち、夜色が空を支配しようとしていた。
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