二人の協奏曲

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帰ってきました、シャイニング事務所の寮。
ちなみに俺の部屋は藍と蘭丸のお隣です。
しばらく帰ってなかったから埃が溜まっていそうだ、と思いながらドアを開ければ予想外にも部屋の中は綺麗だった。

「感謝してよね。秋音が居ない間、ボクが掃除してあげたんだから」

突然後ろから聞こえた声に振り返れば、立っていたのは藍だった。

『久し振り、藍。ありがとう』
「どういたしまして。いきなり学園に通い出すなんていうから驚いたよ。そんな必要、ないでしょ」
『それは社長に聞いてよ。俺だってよく分からないんだから』

立ち話もなんだ、と部屋の中へ勧めれば藍は我が物顔でソファーに座った。
普段だったら形だけでもお茶を出すが、今日は出さない。
無駄にエネルギーを消費するだけだとわかっているから。
藍もそこには触れない。
二人でいるときの、暗黙の了解。

「秋音は今、学校で何をしているの?」
『作曲家コースだからね、やってることは普段と変わらないよ。ただ仕事も同時進行だからいつもより疲れるかな』
「へぇ。ということは誰かの曲を作ってるんだ」
『そうだね、卒業オーディションに向けて皆必死みたいだよ』
「ボクの曲も作ってよ」

は?と反応してしまった俺は悪くない筈だ。

『忙しいんだけど』
「秋音ならいけるでしょ」
『横暴だなぁ』

嶺二がこの間受かったって言ってたドラマのBGM頼まれたし神宮寺の曲も形にしなきゃいけない。
HAYATOの新曲のデモを録らなきゃいけないし、正直手一杯だ。

「仕方ないなぁ。今すぐじゃなくていいよ。仕事が落ち着いたらでいいから」
『あ、それなら…』
「だから早く仕事終わらせてね」
『…やっぱり横暴だね…』

それから少し話し込んだ後、藍は部屋へ戻っていった。
藍の新曲、か…。
今までの藍の曲を聞いていく。
どんなイメージで、尚且つ今までの曲と被らないイメージでいけるか。
そこが、腕の見せどころだ。




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