二人の協奏曲

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あ、カミュだ。

『久し振り、ミュー』

寮の部屋を出ればタイミングが合ったのか丁度ドアから出てきたカミュと会った。

「なんだ、貴様か。しばらく見なかったが何をしていたんだ」
『社長に言われて学園の方に。ミューはこれから仕事?』
「あぁ、そうだ。スタジオに行くなら送ってやる」
『いや、今日は事務所に用があるんだ。またの機会に』
「そうか」

カミュは足を止め、こちらを向く。

「そういえば…、その"ミュー"という呼び方は何だ。寿の真似か」
『違うよ。でも良いだろ、"ミュー"。何か可愛いじゃないか』
「"可愛い"は不愉快だ。…どうせ貴様も言っても聞かないんだろう。もう好きにするが良い」

話は終わりだ、と自己完結して歩き出したカミュ。
ここからは別方向だから仕方ないけど、俺も事務所へと足を向ける。
…それにしても。
去っていった後ろ姿を思い出し、思う。
カミュは勝手に自己完結してしまったけど、嫌なら言ってくれれば普通に呼ぶのに。
なにかとツンデレの要素あるよね、あの人。


さてさて、今日はなんの日か。

『また会ったね、カミュ』
「………。今日はなんだ」

同じことを考えていたらしい。
実は今まで、冒頭を含め6回ほどすれ違っている。

『行く場所は全然違うのにものの見事に会うね』
「まさか貴様、妙な術でも使ってるんじゃなかろうな?」
『ミューじゃないんだからそんなこと出来ないよ。まぁでもここまで偶然が続くと何かの作為を感じるね』
「…シャイニング早乙女が絡んでいる、か…?」
『そこまでは。むしろ調べることに関してはミューの方が得意だろ』

二人で顔を合わせる。

『まぁ社長が原因だとしてあの人の考えなんて読めないんだけど』
「…これは弱味を握るチャンスだろうか」
『ミューそればっかだね。そんなに女王様のとこ戻りたいの?』
「当たり前だ!彼女からの命令でなければとっくの昔にアイドルなんぞやめている」

女王様からの命令なら社長の弱味を握っても意味はないんじゃないだろうか?
色々やっているカミュをみるのは楽しいから言わないけれど。

『そう。じゃあまだ仕事残っているから行くね』
「あぁ。…一度シャイニング早乙女に言った方が良いと思うぞ。お前の仕事は半分近く作曲家のやる仕事ではないだろう」
『あー…うん、知ってる』

苦笑いで返し、じゃあね、と俺は歩き出した。





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