IS<インフィニット・ストラトス>
□第3章
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午後、我らが一年一組はアリーナでのIS操縦の訓練中。現在は五列縦隊で並ばされ、先生方の指示待ちと言ったところ。
俺は真ん中の列、本音が先頭の列の一番後ろにポツンと立っていた。
このクラスには現在31名の生徒がいて、31mod5=1ってなわけで俺が余り状態。
まぁそんなことはどうでも良いんだ。今問題なのは……『篠ノ之くんと織斑くんって幼なじみだったんでしょ?』『あの二人っていつも一緒に居るけど……』『今朝だってあんなに熱ぅ〜く見つめ合ってたし!』……これだよこれ。
どうやら今朝の一夏との睨み合いが、一部の女子には違うように見えたらしい。“一部”これ大事。譲らないからな。
しかもそれが午後には学園中にも広がっていて、今や俺×一夏の構図が出来つつあった。きっと明日には、どっちが受けでどっちが攻めとかで盛り上がってるんだろうなぁ。これだから男を知らないお姫様たちは困るぜぃ。
「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑と篠ノ之、オルコット。試しに飛んでみろ」
俺はいたってノーマルなわけで、ちゃんと女に興味だってある。男になんか興味はねぇんだからな。
まぁ確かに、これまで誰かと付き合ったことはねぇけどさ――別に気にしちゃいねぇからな!
ゴツッ! と綺麗に拳が入った。ゲンコツとか、何年ぶりだよ……いってぇ…。
「ぅぐ……何でしょうか?」
「戯け、聞こえなかったのか? 飛べ」
や、やべぇ……なんか知らねぇがちーちゃんめっさ怒ってる。
ま、まさかちーちゃんもあの噂信じて――
「飛べ」
「――ッサー!」
既に上空で何か話している二人に向かって飛翔した。
あ、やばい。春華兄殴られる。
案の定、千冬姉に殴られた。あれ痛いんだよなぁ……滅多に出ないけど、千冬姉のゲンコツ。
「いってぇ……ありゃ拳改造してるな」
そんなことを言いながら春華兄が上がってきた。
「大丈夫ですか? 春華さん」
「お〜ぅ。病み付きになる痛さ」
「ぇ」
いや冗談。と笑いながら頭を摩ってる。本当に痛かったんだろうなぁ。
「織斑、篠ノ之、オルコット、急降下と完全停止をやって見せろ。停止位置は地表から十センチだ」
「了解です。では春華さん、一夏さん、お先に」
そう言い残して、セシリアが先に地上に向かう。
「一夏〜、事故るなよ?」
春華兄もセシリアを追って行った。
二人ともどんどん小さくなって行く。
春華兄がセシリアを抜いて、雲を纏う。確か、バトルの時にも出ていたものだ。
「はえぇ……」
どうやら二人とも完全停止を難無くクリアしたみたいだ。
「よし、行くぞ!」
意識を集中。背中の翼状の突起からロケットファイアーが噴いているイメージを思い描き、下に向いて一気に地上へ!
ズドンッ!! それは隕石になった。それなりに大きなクレーターをグラウンドに作りあげた一夏。
やっぱ事故ったな。
「馬鹿者。誰が地上に激突しろと言った。グラウンドに穴を開けてどうする」
クラスメイトたちからくすくす笑う声が聞こえる。
「あっはっはっは。馬っ鹿で〜〜」
俺は高らかに笑うがね!
「……すみません」
「情けないぞ一夏。昨日私が教えてやっただろう」
ほほぉ、その話初耳。
「俺も言っただろ。事故るなよ、て」
クレーターに近付き箒に並ぶ。
「いやだって、完全停止のイメージが出来なくて」
「けけけ、――ンン! 馬鹿者、昨日あれだけ教えただろう」
「おい、馬鹿者。それはなんの真似だ?」
「箒とちーちゃん!」
「ん、時間だな……篠ノ之春華、グラウンドはお前が片付けておけ」
「なんですと!?」
「返事は」
「――ッサー!」
「はい。だ、馬鹿者」
ゲンコツ2発は痛いって……ぬぐ、箒にも睨まれてる、流石にふざけ過ぎたか。
「ふぅん、ここがIS学園かぁ……」
夜。IS学園の正面ゲートに到着。肩にかけた大きなボストンバッグをかけ直し、ゲートをくぐる。
歩きだすと、ツインテールにした髪が春の夜風に舞う。ちょっとくすぐったい。
「えーと、受付って何処にあるんだっけ」
上着のポケットから、くしゃくしゃになった学園案内の紙を取り出す。編入生はまず本校舎一階総合事務受付に行くよう書かれていた。そこで教材を受け取るんだろうけど……。
「だからそれどこにあんのよ」
はぁ……自力で探すしかないわね。
「――IS無しでとか無理有りすぎだってぇの……」
するとちょうどここの生徒がIS訓練施設から出てくるようだった。
どこの国もIS関係の施設は似た形してるから、すぐにわかった。
――ちょうど良い。あの子に聞こっ。