小説:魔法少女リリカルふぇいと

□3章
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時空管理局本局
次元世界のあちこちの争いごとや事件を解決する次元世界の警察のような人達の拠点。
ここでは大勢の人間が様々な作業に従事していた。
リンディ・ハラオウンやクロノ・ハラオウンもそんな一人だった。
今日も事件の処理や報告などで慌しい。ようやくの休憩になり、休憩室で一息ついているところだった。

「ふう。中々にハードスケジュールね。はやてさん達の裁判もあるし」
「そうですね。でも何とか恩赦は取れそうですね」
「ええ。管理局の無償奉仕はとりあえず確定だけど、こっちでも何とか手を回して、少しでも反発を抑えないと」

闇の書事件では死者こそ出なかったものの、守護騎士に襲われた人間がかなりいた。そのために、そう言った人や家族の反発を抑える必要性がある。
はやての境遇などを考えれば酌量の余地があるのだが、襲われた人にとってはそんなもの何の免罪符にもなりはしない。

「でも何とかしないといけないわね。はやてさんや守護騎士のみんなのために」
「........はい」

リンディの言葉にクロノは力強く頷く。
だが直後、本局内に警報が鳴り響いた。

「なっ!? 警報!?」

クロノは驚きの声を上げる。本局にこの警報音が鳴り響いた事など、今まで一度としてなかった。
この警報音は襲撃を知らせるもの。本局が建設されてから今まで、ただの一度も鳴り響く事がなかった非常事態を知らせる音だった。

「一体何が.....」
『た、大変です。艦長、クロノ君!』

彼らの下にエイミィ・リミエッタの通信が入る。

「エイミィ。一体何があったんだ!?」
『そ、それが......』

エイミィは言葉を濁した。彼女が映っているモニターから困惑しているような彼女の様子が見て取れる。

「エイミィ。侵入者なの?」
『は、はい。侵入者なんですが、おかしいんです』
「おかしいって、どういう事なんだ?」
『と、とにかく映像を送ります。まずはこれを見てください!』

別のモニターが映し出される。そこには転送用のポートから何者かが侵入している様子が映し出されている。

「そ、そんな!?」
「これは!?」



















モニターを見た二人は絶句した。そこに映っていた人物は二人の良く知る人物だったから。
栗色の髪の毛を左右に分けて束ねた白いバリアジャケットを身に纏い、手には赤い宝玉が中心にある杖が握られている。
二人が見間違えるはずが無い。それは間違いなく、二人の良く知る人物―――高町なのは。

「なのは、さん.......」

リンディが呟く。クロノもまさかと顔を青ざめさせている。何故彼女がここに。いや、そもそもモニターに映る彼女は手にある愛機レイジングハートを局員に向けて放っている。


「なのはがこんな事をするなんて。とにかくすぐに止めないと......って、なんだ、あれは!?」

クロノが転送ポートに向かおうとした時、モニターに新しい影が映る。

「なのはさんが、二人?」

転送ポートからまたなのはが現われたのだ。先ほどまで映っていた彼女と瓜二つ。まるで鏡に映っているかのような同じ姿で。
だがそれは始まりに過ぎなかった。

「な、何なの、これは........」

リンディがモニターを見ながら呆然と呟く。転送ポートから次から次へと同じ姿の『高町なのは』が現われる。

二人、三人、.......どんどん増えていく。十人を超えてもまだ止まらない。二十人、三十人、四十人.......。まだ増える。

それは悪夢の始まり。
本局を悪夢のどん底に落とし込む事件の始まりに過ぎなかった。

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