俺の恋人、
跡部景吾は凄く過保護だ。
―Episode.7




「・・・っ!」


制服を脱いでくると言って寝室へ消えた景吾を待つ間。
ソファーに座り雑誌を読んでいたら、ページの縁で人差し指を切ってしまった。
細くじわじわと出てきた真っ赤な血は、すぐに溢れて指を伝っていく。

「オイ!血が出てんじゃねぇか!!」

「・・・!?」

背後から突然聞こえた大声に振り向けば、そこには私服に着替えた景吾が立っていた。

「紙で切っただけだから、だぃ・・・っ!!??」

大丈夫だと伝えようとした瞬間、手首を掴まれ、強引に持ち上げられる。
そして柔らかな感触が指に当たったかと思えば、それは景吾の唇で。
溢れ出た血を舌で舐め上げられ、傷口をきつく吸い上げられた。
思わず肩がビクリと跳ねる。

「・・・ッ」

指から唇を離し、口角を上げた景吾と目が合った。

「何感じてんだよ」

「か、感じてない!」

「顔紅いぜ?」

「紅くない!!」

そう反論して手を振り払う。
感じたわけじゃない、ちょっとビックリしただけだ。
その・・・なんていうか。
身体を繋ぐ行為をしているときを思い出させるような、いやらしい舌の動きだったから。
景吾に見られないよう顔を背け、手の甲で頬に触れた。
紅くなんか・・・なってない、はず、多分。
景吾は鼻で笑って俺の頭をくしゃりと撫でたあと、近くにある子機を手に取り、ボタンを一つ押して耳に当てた。

「大至急、救急箱を持って来てくれ。・・・あぁ、リョーマが紙で指を切っちまった。・・・いや、俺が手当てする。・・・あぁ、頼む」

子機を戻して隣に座った景吾は、軽い溜め息を吐いて俺から雑誌を取り上げた。

「ねぇ、まだ読んでるんだけど」

「後で読め。手当てが先だ」

「こんなのティッシュで押さえとけば平気だよ」

「ダメだ」

「大袈裟」

「うるせぇ」

それからすぐに控えめなノックが聞こえ、救急箱が部屋に届いた。
コットンや消毒液を取り出し、手当てを始める景吾。

「ほら、指出せ」

「ん」

「ちょっと滲みるかもしれねぇーぞ」

「子供じゃないんだから我慢できるよ」

「まだガキだろうが」

「うるさい。“小さい子”って意味」

「“小さい”?お前じゃねぇか」

「身長のこと言ってるんだったら今すぐ帰るよ」

「冗談だ。そうすぐに怒るんじゃねぇよ、ったく」

「景吾が怒らせてるんだろ!」

透明な液体が傷口の上を流れると、ピリッと少しだけ滲みて、消毒液独特の臭いが鼻孔を通った。
更に救急箱から塗り薬と絆創膏を取り出す。

「後は自分でやるからいいよ」

「アーン?いいから大人しくしてろ」

「・・・景吾って世話焼きだよね」

「バーカ、お前にだけだ」

そう言われながら巻かれた絆創膏。
嬉しさと恥ずかしさが溢れだし、絆創膏の紙屑や消毒液を片付ける景吾にもたれ掛かる。

「ん?どうした?」

「別に・・・・・・。ありがと」

絆創膏が巻かれた人差し指を天井にかざして眺めていたら、「何ニヤついてんだ」と額を小突かれてしまった。





...end



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