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□just a game U
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…とある休日。
えるは 時間がある時には遊戯室で過ごすようになっていた…。
そして今日は…
棚にディスプレイしてある キラキラ輝く美しいチェスセットを眺めていた。
チェス盤も駒も、石のような素材で…美しい光沢と、重厚感を備えていて…
特に 駒は…
黒の光沢の美しい駒と、透明な中に金色の針が混ざったようなキラキラ輝く駒があって…
あまりの美しさに…
いつまで眺めていても 飽きなかった。
「…チェス……。遊べたら、面白いんだろうか…?
…むずかしそうだなぁ。」
と、物思いにふけていると……
「…える。
ここにいたんだね…。」
不意に 声掛けられ、振り向く。
「…マサキくん…!?」
雅季が、涼しげな表情で佇んでいた。
「…最近、ここにいることが多いって聞いてたけど…
…本当だったんだね。」
「うん♪ …初めて見るものも多いし、…このチェスも、キラキラしてて…ずっと眺めてても飽きないんだ…。
…遊べたら、もっと楽しいのかもしれないけど…ね。」
「…キラキラ…
まぁ、当然だね。白の駒は ルチルクォーツ、黒の駒は ブラックダイヤだからね…。」
「…!! クォーツ…ダイヤ…
さすが、西園寺家だね…。チェスも宝石で出来てるなんて。
…ダイヤって…黒もあるんだ……。
…知らなかった……。」
…驚きを隠せない えるの表情を見て…
雅季は…クスクス笑い出す。
「…えるは……鉱石には詳しくないんだね…。
ブラックダイヤは本当のダイヤとは科学的には別物。
…赤鉄鉱の中でも美しく輝くものを、ブラックダイヤって言うんだよ。クォーツ…水晶も、厳密には宝石ではないしね。」
「そうなんだ…。…でも、キレイだね。」
「…うん。…綺麗だね。
…える。 …僕で良かったら教えてもいいけど?」
「…!? …えっ?」
一瞬、言われた意味が理解できず えるは、思わず聞き返す。
「…だから、遊んでみたいんでしょ? チェス。
…教えてあげるよ。」
ちょっと あきれたように、でも 優しそうに薄く微笑んで囁く雅季。
「……本当!? …嬉しい。ありがとう、マサキくん!
じゃあ、チェス盤そっちに持って行くね!」
「 ! 待って、える…」
チェス盤を棚から持ち上げようとすると…
「 !!! …お…重い…!」
えるは、チェス盤を駒が乗ったまま 持ち上げようとしたが…
重くて持ち上がらなかった。
「…だから 待ってって言ったのに…。」
ため息をつきながら、雅季は棚に近づいて 事も無げにチェスセットを持ち上げ、テーブルに運んだ。
「…これ、チェス盤も オニキスの象嵌だし、盤の下に一体化してる収納ケースも 樫の木だから…。結構 重いよ。
…えるが運ぶのは難しい。」
話しながら、駒を手早く並べる雅季。
並べ終えると 席につき…
えるを見つめた。
「…向かいに座りなよ。える…。」
…挑戦的な笑みを浮かべる雅季に…
「…あ、 う、うん…。」
どぎまぎしながら、えるは席についたのだった…。
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