血の夜

□現実
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宍「ッはあ..はあ...ッぅ...。」


俺は長太郎の家を飛び出すと、行く宛もなくただがむしゃらに走った。
走って走って走って走って。
我も忘れ、無我夢中で足を動かした。

そして、足を止めた頃には全く知らない地に立っていた。
止まってみると、今まで自分がどれだけ無茶な走りをしていたか良く分かる。
ゼーゼーと吐き出す息は重く、胸の奥が脈を打つ様にズキズキと痛む。


宍「はあッ..はあ..ッ。」


いまだに荒い呼吸は止まらず、顔が異様に火照って熱を持っている。
俺はキョロキョロと周りを見渡した。
どうやらここはどこかの公園らしい。
すっかり暗くなってしまった公園は、当たり前だが子供達の姿など無く、夜風に当てられたブランコがキーキーと小さく揺れているだけだった。

どうにかしてこの顔の火照りを抑えたいと、もう一度辺りを見回す。
すると、視界の端に薄暗い公衆便所がチラリと映った。


宍「(この際しょうがねえか。)」


俺は小走りで公衆便所に向かい、一番近い蛇口を捻った。
当然だが水がバシャバシャと流れ出て来る。
その水を手で掬い、火照った顔に浴びせる。
思いの外その行為が気持ち良く感じ、夢中になって水を流し続けた。

ようやく顔の熱が引いた頃、俺はキュッと蛇口を捻った。
濡れた顔に夜風がまた心地いい。
当然タオルなど持っている訳はないので、適当にジャージの裾などで顔の水分を拭い、ごく普通に顔を上げた。


宍「ッひ..ぁ..そ、う..だッ!!」


そう、俺は忘れていたんだ。
自分の今の姿を──...。


 
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