血の夜

□追跡
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___side:j.a


大切なことを思い出した。


慈「ねえ...今亮ちゃんって、俺達とおんなじ格好だよね?」


おんなじ格好って言うのはVampireってこと。
自分達が混乱してて、すっかり忘れていた。


長「そ、そう言えば!それにまだ満月だから姿は戻せないし...。」


忍「満月やなくとも、まだ姿は戻せんやろうな。ま、どっちにしろやばい状況っちゅうわけやな。」


人間に見付かって捕らえられてしまった日には、どんな仕打ちを受けることか。
少し想像するだけで、冷や汗が止まらなかった。


長「ッ..早く探しに行きましょう!!!」


焦るように鳳が言うと、窓に足を掛けて大空へと飛び出した。
それに続いて俺と忍足も翼を広げる。


忍「とりあえず、手分けして上から探索。見つかったら携帯で連絡。これでええな?」


俺達は小さく頷く。
そして闇を切り裂く様に三方向へと飛び散った。

俺は亮ちゃんが行きそうな所をしらみ潰しに当たる。
学校、ストテニ場、無いと思うけど一応亮ちゃんちも...とりあえず必死で目を凝らして探した。


慈「どこ行っちゃったの?」


無意識に口から漏れた声は、あまりにもか細くて。
じわりと滲んで来た涙を零れぬ様グッと押さえ込み、もう一度学校に行ってみようと翼を広げた。
しかしその瞬間、その場に似合わぬ軽快なメロディが俺のズボンから響く。
慌てて携帯を取り出せばディスプレイには「鳳 長太郎」の文字。
俺は急いで通話ボタンを押した。


鳳「慈郎先輩、宍戸さん見付けましたッ!!!町外れの公園です!!とにかく早く来て下さいッッ!!」


随分と声が荒い。
よほどのことなのだろう。


慈「わ、分かった!!」


鳳「忍足先輩にも連絡しましたから、とにかく直ぐ来て下さい!!」


鳳はそう口早に言うと、俺の返事も聞かずに電話を切ってしまった。
携帯からはツゥーッ、ツゥーッ..と、虚しく電子音が鳴り響いている。
俺は震える手を無理やり押さえ込み、夜空へと翼をはためかせた。


 
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