血の夜

□苦痛
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宍「は、ぁ゙...ッ?」


忍「血、舐めたいやろ?」


忍足の言葉を全く理解出来ない。


忍「素直に舐めたらええ。」


宍「(意味分かんねえ。んなもん舐める訳ねえだろ!!)」


忍「そうや。それでええ。」


宍「え?」


忍足の声にハッと我に返ると目の前には忍足の指。
何故かその指には先ほどまで付いていた血が綺麗になくなっていた。
ゆっくり顔を上げると忍足は満足げに目を細め口元は緩くカーブを描いていた。
慈郎はボーッとこちらを見つめていて、長太郎は唇を小さく噛み締めて俯いている。

意味が分からない。

この状況からして当事者はきっと俺なのだろう。
だけどその本人が一番状況を呑み込めていないというのは一体どういうことなのだろうか。
全くもって頭がついていかない。
そして気が付くと、先ほどまでの体中の熱さや痛みが嘘だったかの様に綺麗になくなっていた。
喉の渇きもないし、むしろ気分が良い位だ。
俺はとりあえず体を起こして立ち上がった。
忍足も同じ様に立ち上がる。
慈郎と長太郎が駆け寄ってきた。


鳳「大、丈夫ですか...?」


宍「ああ。何ともねえよ。」


とにかく体中の異変が収まったことは素直に良かったと思う。
だけどやはり頭の中はもやが掛かったかの様にスッキリしなかった。


宍「なあ、さっきのありゃ一体なんだ?いきなり体中が熱くなって立っていられなくなってよ...。忍足が目の前に来て、気付いたら治ってやがった。」


3人を見渡すが誰1人として口を開かない。
だんだんとイライラが溜まっていく。


宍「おい!!何とか言えよ!!」


俺が力任せに怒鳴りつけると、ビクリと長太郎が小さく跳ねた。
そしてゆっくりと口を開いていく。
目にはうっすらと涙。
他の2人は何も言わずにただ俺を見つめている。


鳳「宍戸さん、よく...聞いて下さい。」


長太郎のあまりに悲痛そうな表情に俺は長太郎から目が離せなくなった。


 
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